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健康かながわ
  受動喫煙防止への気運が高まる中、禁煙化を進める企業も多い。多くの壁を乗り越え、敷地内・勤務時間内の全面禁煙化を実現したリコーグループの道のりと健康支援を学んだ。当日は52団体60人が参加。 

全グループで推進

講師は国内のリコーグループの安全衛生を推進する(株)リコー・コーポレート統括本部ジャパンビジネスサポートセンターH&S統括部スペシャリスト五十嵐好彦氏と保健師の桃井彩氏。前半は五十嵐氏より、プロジェクトの概要と実践に至る経緯から始まった。
 多くの拠点を持つリコーグループではそれぞれに喫煙対策を設けていたが、全社共通の施策の策定には至っていなかった。本部でも、2011年より水面下で喫煙率調査が進められていた。これらを背景に、2014年6月の経営会議で中長期の経営戦略として「敷地内・勤務時間内の全面禁煙化」を経営陣に提起したが、社長の要請からわずか半年間のタイムスケジュールで計画は進むことになった。
 各拠点の現況の聞き取りや施策の説明に遠方へも足を運び、施策具現化のために産業保健スタッフだけでなく健保と連携をとる一方、総務、安全衛生推進、産業保健スタッフの三位一体のPG(プロジェクトグループ)を立ち上げ、計画の進捗状況を2週間に一度、専務執行役員に必ず報告。また、担当の執行役員から全社にメッセージを発信。経営陣の決意表明など、経営陣を巻き込んで、全社の意識統一を図った。
 当初、喫煙のための離席による業務効率の低下など、多角的に禁煙のメリットを訴えた結果、逆に議論はぼやけ、喫煙者の健康被害に関心が集中するなど、受動喫煙はアピールが十分にできなかった。その反省から、論点を「健康施策、受動喫煙の防止と健康増進」に絞り込んだ。さらに、各事業所の社員代表が集まる会議体で、総括産業医から施策を説明した。
 ベンチマークとして禁煙化の先行企業を訪問。情報交換から「完全定着には時間がかかる」ことを学び、「地道にコツコツと、ぶれない信念。やりきる姿勢、そして全員参加」と、キーワードが決まった。
 さらに共通のガイドを策定。「非喫煙化により、健康増進快適職場を実現します」と掲げ、グループ共通のルール化を明確にし、推進した。 「健康が重要課題であることは誰もが認識していますから、この点については異論はありませんでした」と、五十嵐氏は計画推進のポイントを示す。
 「できるところから始めるといいと思います」健康施策について桃井氏が続けた。
 社内の喫煙率のデータ化。社員に禁煙の賛否を問う。喫煙場所の認識。さらに、社内の禁煙化は産業保健スタッフだけではできないので、衛生管理者や人事、総務に加え、工場長、グループ会社の経営陣などキーパーソンを見つけ、協力を得る。
 また、多くのスタッフが関わると対応も統一を欠くので、産業医を中心に面談や指導の方法など、対応に一貫性を持たせるために、検討を重ねた。
 禁煙の意志のない者に禁煙指導をしつこく迫っても効果がない。禁煙の意志のある人、禁煙イベントの申込者を優先に、面談やメールで支援を始め、最終的に喫煙者全員に向けて働きかけた。

敷地内禁煙の効果

 面談は、1日の本数、喫煙歴など、ニコチン依存度から導入するが、無関心期から実行期まで行動ステージモデル(図2)にあわせた対応が求められる。また、「たばこをやめましょう」とはっきりと伝えることが大切。一言、声をかけるだけでも禁煙率は上がるという。
 地域住民向けのイベント時、事業所の人通りの多いところでのブースも直接喫煙者の話が聞け、効果があった。
 さらに禁煙化に向け、健保と共同して希望者に「禁煙チャレンジ」を実施。「禁煙補助薬、ニコチンパッチ」「禁煙外来の治療を受ける」の2コースから選択。費用を補助した。事後のアンケートでは、禁煙のきっかけは「敷地内禁煙になったから」という回答が非常に多く、改めて禁煙化の効果を実感した。
 結論として、他社事例、研究データなど、エビデンスを用いて、産業保健スタッフだけではなく、周りを巻き込み、社長や経営陣を説得する。協力して進めることが重要。
 「ピンチはチャンスと言いますが、担当になったことをチャンスととらえてください」と桃井氏は結んだ。
 「いろいろセミナーに参加させていただいていますが、これだけ細かい質問は初めてです。私たちとしてもうれしいです」
 会場に寄せられた質問に丁寧に答える五十嵐氏と桃井氏。参加者の熱意が会場を包んだ。 

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