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健康かながわ  

第3回かながわ健康支援セミナーが、9月18日、神奈川県中小企業センタービルで行われた。東京大学医学部附属病院22世紀医療センター特任教授の松平浩先生を講師に迎え、「腰痛・肩こり借金」「これだけ体操R」「ハリ胸プリけつ」「美ポジR」をキーワードに、腰痛・肩こり解消法を体験しながらマスターしていく。当日は59団体73人が参加した。

腰痛・肩こりの原因は体と心の両面にあり

プレゼンティーズムに影響し、労働損失を生む腰痛と肩こり。その原因は、身体的負荷と不良姿勢に加え、血流悪化や筋肉の収縮を生む心理社会的ストレスによるところも大きい。今回は、体と心のアンバランスが腰痛・肩こりに及ぼす影響を探り、職場で習慣にしたい痛みの解消法を習得する講座となった。
 腰痛は、腰椎やその間にある椎間板に負荷がかかり、ずれや傷が生じて発症する。椎間板内に圧センサーを挿入して椎間板圧縮力を調べた研究によると、何気ない前屈で200㎏重、20㎏を無防備に持ち上げると腰に420㎏重の負荷がかかると判明。ただし、胸を張って骨盤を立てておへその近くで荷物を持つと、負荷は310㎏重まで減らせる(米国の国立労働安全衛生研究所のデータでは、年齢・性別を総合的に考慮すると、340㎏重以上の椎間板圧縮力を組織損傷しうる危険水域と定めている)。松平先生はこの椎間板への負荷を「腰痛借金」と命名。自身が考案した腰痛借金を減らすための、科学的根拠のある二大メソッドを紹介した。
 全員起立で行ったのは、両手で骨盤を前に押し出す「これだけ体操R」(図1)。猫背が続いたときに、悪姿勢でずれた髄核を正しい位置に戻すイメージで行うとよい。もう1つは、日常のちょっとした作業をする際に胸を張った姿勢を癖付ける「ハリ胸プリけつ」(図2)。前かがみで重い物を持つときにこの姿勢を意識すると、腰への負担を軽減できる。また、「これだけ体操R」のとき両手が寄らない人に向けて、肩甲骨まわりの可動域を広げる「肘ぐるぐる体操」も実践した。「腰痛に過剰な安定は逆効果。痛みが怖いからといって患部を動かさないでいると、筋肉の硬直や血流悪化を招き再発、慢性化します。医師が恐怖を与えない説明をすると4週間で7割の人が痛みから解放された研究結果もあり、不安なく痛みと向き合い、無理のない範囲で活動するのが完治への近道です。また、ぎっくり腰などの腰まわりの“事件”は、おもに午前9時~11時に発生するので、ご紹介したメソッドを朝礼で行うといいでしょう」と松平先生。また「腰痛治療の主流は薬ではなく、運動・体操や心理社会面の対応へとシフトしています。そして再発予防には、教育と運動・体操のコンビネーションが有効です」と強調した。

日常生活の活動量を増やす心掛けを

運動がもたらす健康効果は立証されており、生活習慣病やがん、認知症をもたらす慢性炎症は、筋肉を動かすと分泌されるマイオカインという物質で抑制できることがわかっている。腰痛・肩こりの解消においても日常生活の活動量を上げることが必須で、スポーツクラブ通いが続かない人は、ウオーキングや駅の階段を使う低強度の運動を行うだけでも効果は十分。
 「私の考える一番の薬は『美ポジで早歩き』です。おへそを引き込み、体幹のインナーマッスルである腹横筋と多裂筋を稼働させた美ポジ姿勢は、腰痛借金をためない状態。ウォーキング中はこの姿勢を意識して」とアドバイス。美ポジ姿勢を保つ「美ポジ体操」も体験した。



マインドフルネスで心的要因にアプローチ
ストレスからくる腰痛・肩こりの対策はどうか。不安や緊張が続くと脳の扁桃体が過剰に働き、痛みを感じやすくなるため、好きな音楽を聞くなどし、幸福ホルモンのドーパミンとセロトニンの分泌をセルフコントロールする必要がある。
脳のコントロールには、最近話題の「マインドフルネス」が効果的だという。このメソッドは、目を閉じて呼吸に集中して今この瞬間に意識を向け、過去や未来の不安に振り回されない意識の状態を習慣づけるもの。しかし実際に行ってみると、雑念がわき集中するのは想像以上に難しい。そんなときは「アー」「オー」「ムー」と発声しながら、胃・胸・頭が振動するイメージを持つと、雑念に意識が向かなくなる。また、「具体的な数字を出してみる」方法もストレス軽減には効果が期待できる。苦手な上司と会うことを考えると前日から憂うつになる。しかし上司との接触時間は30分。勤務時間8時間を100%とすると、このストレスフルな時間はわずか6・2%。数字に出すと「なんだこれだけか」と心が軽くなる。
このメソッドを参考に、骨格の位置調整やインナーマッスルの賦活・強化、メンタル運動でマイオカインや幸福ホルモンなど内因性物質の活性化を図ることで、従業員の腰痛・肩こり・メンタルヘルスの不調が解消され、企業の生産性アップにもつながると、松平先生は結んだ。。

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