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健康かながわ  

第4回かながわ健康支援セミナー(主催=当協会)が、11月22日、神奈川中小企業センタービルで開催された。今回は、労働生産性の低下を招くといわれるプレゼンティーズムの現状とそれを軽減する方法について、東京大学医学部附属病院22世紀医療センターの松平浩特任教授が講演した。参加者は、35団体38人。

日本人は勤勉で多少の不調では休まないため、アブセンティーズム(病気などの理由で欠勤や休職、遅刻、早退すること)よりもプレゼンティーズム(何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し、業務遂行能力や労働生産性が低下している状態)での労働損失が大きいといわれる。そして、プレゼンティーズムに大きく影響しているのが「腰痛」と「肩こり・首痛」だ(図1)。

「直近の、日本全国1万人の労働者に対して行った調査では、腰痛や肩こりでの経済損失は、年間約6兆円強、精神の不調で約3・5兆円、睡眠の不調2・4兆円という試算も出ています。産業保健スタッフは、これからはここを意識してやっていく必要があると思います」と松平先生。

「腰痛は動いて直せ」が 新常識

では、実際に腰痛・肩こりなどの身体の不調を解消するのはどのようにすればいいのか。 松平先生曰く、「ぎっくり腰などは、痛みへの恐怖から、安静にして大事にしようとする“恐怖回避思考”が働きます。しかし、安静にする意識が高いと、かえって再発しやすいというデータがあり(図2)、いつもどおりに仕事をしていると7割の人が4週間で痛みがなくなります。

回復には、薬や施術だけではなく、大丈夫という安心感、不安や恐怖を与えない医療者の態度が必須です」。 腰痛のない健常者でも、MRIなどの画像を見ると76%の人にヘルニアがあり、逆に、腰痛がある人の47%は画像上の異常がないという報告がある。「画像診断が先になって、不安や恐怖が出てくる。画像と痛みは、多くが関係ないということを教えてあげてください。またプレゼンティーズムの解消には、ドーパミンをほど良く出して、扁桃体を無駄に興奮させないセルフマネジメント能力が必要だと思います」とアドバイスがあった。

「1日8、000歩」 「早歩き15分」 「階段見たらありがとう」

腰痛が起きたことで不活動となれば肥満となり、脂肪細胞が肥大化し、慢性の炎症状態となる。そうなると動脈硬化や糖尿病、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、がんなどが引き起こされる。このような身体の老化を松平先生は『炎症負債』と呼び、負債を返すために①食事・栄養②身体活動・栄養③瞑想・マインドフルネス、の3点が重要だという。 なかでも運動習慣は、筋肉を使うことでアンチエイジング物質のマイオカインが出て、炎症をコントロールすることができる。

すべての疾病予防には、1日8、000歩の活動のうち、20分の中程度の運動(速歩きか階段昇降)が有効であり、1日15分の速歩きで、死亡リスクが14%低下する。さらに座り過ぎによるリスクもあり、世界一座位時間が長いといわれる日本人は、1日8時間座っていると死亡リスクが1・2倍になるという。 運動が体に良いことはわかっているが、実際取り入れるのは難しい。

そこで松平先生は、活動量を上げるため、歩くスピードをアップすることと階段を利用することを提案した。また、座りっぱなしを中断するブレイクに『これだけ体操R』(図3)の活用もいいという。これは、悪い姿勢で崩れた身体の位置をリセットするイメージで行うので、姿勢を正し、肩こりや腰痛の防止・改善にもなる。 「エクササイズは予防にも治療にもいいけれど、生活のどこに落とし込み習慣化させるのか、なかなか大変です。ある保健師さんは、『これだけ体操R』のやり方をコピー機に貼って、コピーを取る待ち時間にやってもらうようにしたそうです」と具体的なアイデアを披露。またプレゼンティーズムの代表的な症状を解消するために、睡眠から介入することへの提案もあった。 「習慣化させる、行動変容を促すなどの施策は、複数用意しておく必要があります」という松平先生は、現在LINEを利用した試作コンテンツなど、さまざまな試みをしているという。松平先生の活動について、詳しいことは下記で。

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