法人向けサービス
前のページへ戻るHOME > 法人向けサービス > 健康情報(法人向け) > かながわ健康支援セミナー>プレゼンティーズム・ゼロに向けてのコンディショニング
 
健康かながわ  

第5回かながわ健康支援セミナーが、2月13日、グランベル横浜ビルで開催された。30年以上、約2万人のアルコール依存症患者を診てきた経験と研究をもとに、アルコールによる健康障害、依存症になる前に防ぐ方法などについて国立病院機構久里浜医療センター臨床研究部長の横山顕医師が講演した。参加者は、産業保健に携わる保健師や看護師など67団体76人。

 過度の飲酒は発がんのリスクを高める

 アルコールによる健康障害は全身に、さまざまな症状で現れる。厚生労働省が策定した「健康日本21」によると、飲酒をして顔が赤くならない男性の「節度ある適度な飲酒量」は1日アルコール20グラムで、ビールならロング缶1本、日本酒では1合が目安になる。(表)

アルコール中のエタノール、アセトアルデヒドには発がん性の十分な証拠があり、日本人の場合、口腔・咽頭、食道、胃、大腸、肝臓、喉頭、乳、前立腺といった部位の発がんが飲酒量と関係あると言われている。 毎日40グラム以上飲酒していると生活習慣病のリスクが高くなり、1日60グラム以上の多量飲者はアルコールにまつわる問題をたびたび引き起こしている。飲酒のほか喫煙も健康に大きく関わっており、1日の本数×喫煙年数が600以上の飲酒家は飲酒・禁煙習慣のない人と比べ、下咽頭・食道がんになるリスクが30倍以上にもなる。

 がんを予防するために心がけたいこと

 長生きと飲酒量の相関でいうと、月に3回までの「ときどき飲む人」が長寿である。また多量飲酒の人も、休肝日を週12日設けるとがんや脳卒中のリスクを低減できることがデータで示され、休肝日の有効性が認められている。飲酒、喫煙習慣のある人が、がんを予防するためには、咽頭や食道の詳しい観察を含めた内視鏡検査と検便による大腸がん検診を毎年受けること、肝硬変があれば年3回の超音波エコーと年1回のCT検査も加えて欲しい。

断酒、禁煙できない人が、日常的に気をつけたいのは野菜、くだものを毎日食べるよう心がけることだ。1日100グラム摂取することで、1日1合以上飲酒している人の食道がんのリスクは18%減少する。また大腸がん予防に運動が良いことはよく知られている。このように飲酒だけではなく喫煙、食生活、運動など生活スタイル全体を見直していくことが必要だ。

 アルコール依存症は命を脅かす

 現在日本には約107万人のアルコール依存症者がいるが、病院で受診しているのはわずか6万人である。また多量飲酒者は250万人存在する。依存症になると高血圧や脳出血などの脳循環器系疾患、骨粗しょう症や骨折などの骨・関節・筋疾患、脳萎縮、慢性硬膜下血腫などの脳・神経障害といったリスクが高まる。また当センターの例でも、退院後4年で亡くなった人の70%は断酒できない人であった。多量飲酒を続けると原因不明で急死するケースが多い。これは飲むと食べないために栄養不足に陥り高度の脂肪肝を伴う代謝の異常で、意識障害、アルコール性血糖、低カリウム血症なども要因になる。

 肝障害に早めに気づいて適切な対処する

 多量飲酒を続けている人は肝障害になるケースが多いが、そこで適切な処置、対応をすることが肝要だ。自分でも気づかないうちに肝硬変になっている場合でも、断酒をすれば肝臓は再生していく。アルコール性肝炎は黄疸、発熱、腹水などの症状があるが、まず朝の尿がウーロン茶のような茶色になったら肝炎だと判断して病院で診察を受けて欲しい。また肝障害でわかりやすいのは、「手掌紅斑」という手のひらが赤くなっている人、これは長年肝臓を壊している状態だ。また胸のあたりに小さなクモの巣のような血管が出てくる「クモ状血管腫」のある人、あるいは男性なのに乳房が女性化している人は肝硬変である。

 依存症になる前に周囲が働きかける

 アルコール依存症になる前に量を減らしたほうが良いのは、毎週の飲酒量がビールロング缶14本(男性:アルコール量280グラム)、7本(女性:同140グラム)を超えていて、高血圧や肝臓病など健康に悪影響が出ている人である。飲み過ぎ頻度をはじめとするアルコール症のスクリーニングテスト「AUDIT」を実施して、8点以上であれば、周囲の人間が減酒させるために簡易介入することをおすすめしたい。そのためにできることはまず、簡単な目標、たとえば無理のない具体的な飲酒量や休肝日の目標を設けることだ。次に、毎日の飲酒量を記録した飲酒日記をつけること。この2つを実施するだけで減酒できた、という事例は多い。(図)

 また減酒を支援する立場としては、当人が頑張っていることを褒める、一定期間禁酒期間を設けて耐性を下げる、1回の指導は3ヵ月間有効といった点にも配慮したい。アルコールに関するパンフレットを渡すだけで減酒につながるケースも少なくないので、当センターの介入ツールをホームページからダウンロードして活用して欲しい。

中央診療所のご案内集団検診センターのご案内