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健康かながわ

コラージュ療法

「自分の好きな写真やイラストを自由に切り抜いて、台紙の上に好きなように置いて貼ってください」と講師の杉浦京子先生は簡単に進め方を説明する。 参加者の手元にはのり、ハサミ、四つ切りの画用紙(三八cm×五四cm)と、数冊の雑誌やカタログが用意されている。

私はとりあえず気に入った絵を片っ端からそのページごと破り取った。最初に目に入ったのが屋外で微笑ましく写った家族の写真だ。次に自然の風景・花の写真、実のなる植物のイラスト。最後にサラーリーマンがガッツポーズをとっている写真。それらを切り抜き画用紙の上に自由に並べる。真ん中に家族の写真。右下に植物のイラストを、左には海山や夕日の写っている自然の風景。右上にはガッツポーズをとっているサラリーマンの写真。そしてその周りに草花の写真を貼ってみた。

周りを見回してみると、雑誌とハサミを片手に一生懸命切り抜いている。丸や四角などいろんな形に切り抜いている。レイアウトで思案する人、遠目から自分の作品を眺めてはのりづけする人。まるで工作に夢中になっている子どものようだ。

さて、作品ができあがると四人グループになって自分の作品を紹介しあう。できあがった作品を見るとこれまたビックリ。整然と並べている人、無造作に貼っている人、画用紙の空白が多い人、画用紙を一杯に使って空白が全くない人など、さまざま。一番驚いたのは立体形に貼りつけた作品だ。「こんな貼り方もあったんだ」など驚きの声があがる。また「これは素敵な場所ね。旅行に行ってみたい」「私、こういう場所へ行きたいなぁーと思って貼ったの」など参加者同士思い思いに作品の感想を述べている。

コラージュとは

image「ですから子どもだけ作品を作るのではなく、先生も作品製作に時間をあててください」と続けた。作品と同時にコミュニケーションを通して治療方針を立てるという。 コラージュの見方のポイントとして現在のところでは、箱庭作品や絵画の見方、夢分析の方法などを参考に行っているという。作品の見方や解釈は特に決まった形はない。一枚の作品だけを見るのではなく、何回か継続して作品を作り、それらの流れを見ていくことが大切。「作品の変化と関連性を見ていくことで、子どもの心理的変化が理解できます。その場で作品を解釈する必要はありません」と杉浦先生は話す。

また「作品を見たときの全体として受ける感じが大切」だという。世界を二つに分離したり、孤立していたものが、段々と全体の中に統合されていく場合が実際の治療の中で起こってくるという。

また、空間のどこにどのようなものが貼られているかを見ることも大切。空間の位置によってその意味も異なってくる(図)。だが以上はあくまで一応の目安としてみるものである。

最後に私の作品を杉浦先生に見てもらった。 「どういうイメージでつくりましたか」「幸せな家族が自然のなかで伸び伸び暮らし、仕事の面でも皆で協力しあって楽しく、意欲的にできればいいなー」と思って作りました。「そうなんでしょう」と杉浦先生。「右下の実のなるイラストはどういうイメージですか」「わかりません、ただなんとなくです」実のなる植物は人を育てるという意味がある。「教育者に向いていますね」と、いわれた。 サラリーマンの写真をどこに貼るか迷ったが最終的に右上に貼ったが、この空間は社会を表すと言われた時、まさにぴったりなので驚いた。

(健康かながわ1998年11月号)
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