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健康日本21とがん対策

健康寿命をのばす

これまでの厚生省では、一九七八年からの「第一次国民健康づくり対策」(栄養に重点)、一九八八年からの「第二次国民健康づくり対策(アクティブ80ヘルスプラン)」(運動に重点)を通じて国民の健康づくりに取り組んできました。今回出ました「二一世紀における国民健康づくり運動」通称「健康日本21」は、「第三次」とは謳っておりませんが、性格としては同じ延長線上にあるといえます。

ただし、こうした取り組みを基礎として、今までとは考え方を少し変えた健康づくり運動を展開していこうと打ち出したものです。 健康に関するデータをみてみますと、まず死亡原因ではがん、心臓病、脳卒中といういわゆる三大病を含む生活習慣病全体で約六二%を占めています。また主要疾患の総患者数をみてもがん患者で一三六万人、最も多い高血圧性疾患は七四九万人(一九九六年)と生活習慣病に関わる患者が極めて多くを占めています。次に医療費からみると、全体の三二・四%が生活習慣病関連で、七兆五千億円に上っています。

生活習慣病は、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発生・進行に関与する疾患群」と定義されています。これは生活習慣を改善することによって病気の発症や進行が予防できるということも示しており、この一次予防に焦点をあてていこうというのが健康日本21なのです。

基本的理念は?

この健康日本21策定にあたっての社会背景として大きく四つを挙げることができます。一つが先進諸国にみられるように少子・高齢化の進行していること。二つ目が高齢社会と密接に関係した生活習慣病の増加。三つ目が要介護高齢者の増加。そしてこれらの結果として四つ目には医療費の増大という事態が起きています。

こういった背景を踏まえ、単に平均寿命を伸ばすだけでなく、健康で元気に暮らせる期間、すなわち「健康寿命」を延長し、生活の質を向上させるために健康日本21計画を策定し、実施していく―という枠組みを作ったわけです。表のように〔1〕「対象領域」を策定し、〔2〕二〇一〇年までに達成すべき「大目標」を決定し、〔3〕そのための分野別に具体的な数値を設定した「中目標」を設定し、〔4〕さらに詳細な「小目標」を設定して、最後に〔5〕行政が「施策」を立てていくというステップをとっていくことになります。

計画を設定するにあたっての基本的な考え方は七点あります。一つは「証拠の重視」です。EBMという言葉がありますが、科学的根拠に基づいた数値目標を設定していくということです。

二番目が「目的指向」型の計画にする。目的の達成や問題の解決を目指すことを明確にしていくということです。

三番目は「ポピュレーション・アプローチとハイリスク・アプローチ」をバランスよく取り入れる。疾患を発生しやすい高いリスクを持った個人を対象に絞り込んだものがハイリスク・アプローチです。しかしこれは特別の問題を持った少数の集団にのみにアプローチするもので、ハイリスクと考えられなかった大多数には全くリスクがないわけではなく、結果的に発症する患者の数というのはこの大多数の集団の方が多いのです。そこで対象を一部に限定しないで集団全体へアプローチをし、集団としての平均値を下げていこうという考え方がポピュレーション・アプローチです。(ジェフリー・ローズ著『予防医学のストラテジー』・医学書院に詳しい)この二つのアプローチをうまくバランスよく取り入れて進めていくべきだということです。

四番目は「個人の特性の重視」。年齢や性別、特徴などその個人の特性を考慮して計画を立てていく。五番目は「効率性の重視」です。どくなすばらしい効果があげるものであっても効率が悪ければうまく進みません。そして六番目には「住民参加」。最後に「相互コミュニケーションの重視」です。例えば地域では、衛生主管部局が行う健康づくりばかりでなく、職場における健康づくり、学校分野での健康づくりなどさまざまな健康施策が行われているわけですが、これがバラバラで行われていると効率も悪く、それらが相互に連携して実施していく必要があり、そのために相互コミュニケーションが重要となってきます。

国の役割と地方自治体の役割

この健康日本21を進めていくにあたり、国の役割としては第一に地方計画策定の支援。二番目に関係者間の連携の促進。具体的には本年度、「健康日本21推進全国会議」を発足する予定となっています。さらにその下部組織としてより実務的な「健康日本21推進協議会」を設置することとなっています。

三番目にベースラインデータの整備。国レベルでは使えるけれども抽出調査のために都道府県レベルでは使いにくいものもあり、それを市町村レベルで使用できるような形で収集していきたいと思います。例えば来年、国民生活基礎調査の大規模調査年ですので、健康日本21の指標に有効なものを盛り込むなど考えています。

四番目にマスメディアなど多用な経路を活用して普及啓発活動。五番目に技術的基盤の整備をしていきたいと思います。  地方自治体には、〔1〕健康づくり施策の企画と実施〔2〕関係者間の連携の促進〔3〕データ収集と評価〔4〕地域特性に応じた普及啓発―などの役割をお願いしたいと思っています。

(健康かながわ2000年9月号)
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