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歯科健診受診者の意識調査

image県予防医学協会では平成元年から一般健康診断と同時に「歯科健康診査」を付加項目として組み入れた効率的かつトータルな健診を提案している。平成11年度には11事業所16,274人の方が受診している歯科健診は単なる虫歯の進行度の検査ではない。
口腔内を総合的に健診することに重点をおき、虫歯・歯周炎治療の有無、義歯装着状態、充填物・冠の状態そして口腔内の健康状態のチェック。さらに唾液潜血反応によって歯肉炎の検査まで行っている。

歯科健診の流れはまず、〔1〕問診票による問診〔2〕歯科衛生士による唾液潜血反応で歯肉炎の検査〔3〕歯科医師による口腔内の診査、となっている。
歯科医師の診査後には医師から必要な受診者には直接指導が行われ、結果通知が手渡しされる。この間に要する時間は一人約5分。

この歯科健診の特徴は一般健康診断と同時に実施が可能であること、受診者に苦痛をあたえずに短時間で口腔全般の診査を実施できること、そしてなによりも健診時に歯科医師からの指導が受けられ、受診者が「歯の健康」へ強い動機づけができる、ということである。 基準値が設けられていない歯科健診の場合、医師によって判定が異なる、と一般的には言われる。しかし当協会では鶴見大学歯学部予防歯科学教室・北村中也教授の総合的な指導のもと、結果判定については一貫したものとなっている。

女性はきっちり治療

今回、北村教授によって歯科健診受診者の意識調査が実施された。このアンケートは7年間にわたり当協会で歯科健康診査を実施している、ある事業所の従業員1、545人(男性1,190人、女性355人)の協力を得て今年の三月の健康診断時に実施された。その結果からいくつかのポイントを紹介したい。

特徴的だったのは「歯みがき回数」。男性では「1日2回」の回答が61.6%と多かった、女性では「1日3回」の回答が最多で60.7%。男女併せると「1日2回」で55.1%であった。
このデータを厚生省が昨年十一月に実施した「平成十一年歯科疾患実態調査」(以下厚生省調査)と比較してみると「1日3回以上」毎日みがくと回答したのは厚生省調査では19%でしかなかった。「1日2回」の場合でも48%。今回のアンケート結果と比べると、その差は目立つ。 また歯科健診時に「治療の必要があるか、歯科医師から指摘された」という質問に対して、アンケート結果では54.7%(男性52.0%女性63.7%)の人が「治療の必要なし」であった。

当協会の歯科健診では健診時に歯科医師から健診結果を必要がある受診者に対しては説明するシステムとなっている。また検査前には「気になることはありますか」という質問を歯科医師が受診者に行いながら、コミュニケーションを大切にした健診を行っている。もちろん治療を指摘する対象となるのは、う蝕(虫歯)だけではなく「歯列・咬合・顎関節」、「歯肉」、「生えかわり」を含んでいる。 厚生省調査では「処置完了の者」いわゆる治療の必要なしの人は51%であった。しかしこの「処置完了」とはう蝕のみを対象にしているものであり、今回のアンケート対象者の場合70.9%の人がう蝕の治療は必要ないことを考えれば、その差はさらに際立ってくるだろう。

もうひとつユニークな結果があらわれた。それは「健診で治療を指摘された後、治療に行ったか」の質問。女性の82.9%は治療を受けた、と回答したが男性では59.7%であった。これと同じ傾向だったのが「具合の悪いところがあれば、すぐに治療を受けるか」という質問。全体では66.4%の人が「すぐに(または、なるべく)受診する」と自覚症状があった場合には治療をうける、と回答している。しかし男性の33.5%の人は「我慢してしまう」と回答していた。

歯も美しくありたい

歯みがき回数や治療の有無をみても女性の方が男性よりも歯の健康に気をくばっている、という印象が結果からうかがえる。 このアンケートを企画・実施した鶴見大学・北村中也教授は「女性の方が歯をきれいにみせる、つまりみだしなみ・おしゃれとして歯の健康に気を使います」という。ある調査によれば、小学生(九~十歳)くらいから、歯みがき回数などに男女差があらわれてくる、と北村教授は指摘する。

女性の「美しくありたい」という心理と同時に、歯科健診という場が、歯の健康を保つための動機づけとなっている、と北村先生。それは健康診断という一年に一度、自分自身の健康を見直す場所で健診と歯科健診が同時に行われることによって生み出される効果だ、という。受診者のニーズを知るためにアンケートでは「自分の口腔内で気になるところは」という質問をした。(グラフ)男女ともに最多の回答は「治療が必要かどうかを確認してほしい」というものであった。やはり自分の健康度を評価してほしい、というアセスメントに対するニーズは高いと考えられる。

(健康かながわ2000年12月号)
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