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労働衛生機関評価制度

労働衛生機関評価制度は、事業者が健康診断などを安心して委託できるように第三者機関が健診機関を評価し、公表していこうと平成10年に発足。翌年、学識経験者・事業者代表・労働者代表・関係団体代表からなる第三者の評価委員会で審議された第1期労働衛生評価認定機関は、全国で105施設。当協会も認定を受け、今年、2期目を迎えることとなった。この制度の創設に関わり、本制度の調査指導員であり指導グループ委員でもある当協会集団検診センターの森雄一副所長に本制度の意義と二期目を迎えるポイントを記してもらった。

最近、有機溶剤健診の尿代謝物検査の現状について、全国資料をまとめる機会があった。 この尿検査は、有機溶剤作業による曝露状況を知る重要な検査である。しかし、有機溶剤の代謝物は生物学的半減期が短いため、作業終了後に採尿した検体でなければ正確な結果が得られない事は健診機関に働く人は誰でも知っている。それにもかかわらず、作業前や午前中に尿を採っている健診機関が約40%もあるというデータに遭遇した。 代謝物検査のための尿をいつ採ってもよいということは、「安易な健診方法であり、無責任でいい加減な健診機関」である事は間違いない。

平成元年、労働安全衛生規則が改正され健康診断の内容は大幅に充実した。その結果取り入れられた検査項目の一つが前述した「有機溶剤取扱者健診の生物学的モニタリング検査」である。 同時期、全国労働衛生団体連合会(=全衛連)は、労働省が策定した「優良な健診機関の育成事業委託要綱」に基づく「総合精度管理事業」を受託した。その要綱の中で、本事業に参加し、かつ、一定のレベルに達した機関については、関係者に周知徹底し、事業場における労働衛生が適正に推進されるよう活用を図る・・・と述べている。

このように、「正確で高質な健康診断や健康指導が提供できる優良な労働衛生機関」を認定しようという考えは、当初からあったのである。時代の移り変わりに応じ様々な紆余曲折を経たが、平成10年、労働省(現厚生労働省)の細部にわたる指導を受け「労働衛生評価機構」は発足。同11月第1回の労働衛生機関評価委員会が開催された。

書類による第一次審査を通過した申請機関には、2名の調査指導員が派遣され、詳細なチェックリストに基づく第二次実地調査が行われた。その調査結果は、評価機構事務局に集積され、学識経験者・事業者代表・労働者代表・関係団体代表からなる第三者の評価委員会で審議され認定機関は決定された。平成11年11月から14年3月までの第一期労働衛生評価認定機関は、全国で105施設に達している。 当協会も、平成11年11月1日、第一回の認定を受けている。

さらに厳しくなったチェック項目

それから三年、有効期限が終了する本年は、第二期に向けての更新が行われる。当会もその更新を受けることになっている。 一方、評価機構事務局は、本制度発足直後から次回更新時に向けて評価基準の見直しを開始していた。合計9回にわたる「評価基準見直し検討部会」の結果、特に実地調査時の「チェックリスト」が徹底的に見直され、別表に示すように従来の21区分、114項目から、24区分、180項目のチェックリストへと大幅に改善された。

第一期目のチェックリストでは、設備・機器類やマニュアル類のチェックもそれぞれの「有無」に重点が置かれていた。それが、改正リストでは、単に有無だけではなく「実用に供している設備・機器類」であるか、「実務に即したマニュアル」であるか、「記録類」は整備され運用されているか等がチェックできるように改善された。冒頭述べた生物学的モニタリング試料の採取状況も当然調査対象に入っている。 また、日常検査の精度管理についても、検体検査を外注している施設が有利になる傾向を否定できなかった従来のチェック内容を見直し、安易に外注検査している施設が有利にならず、より公平観が保たれる項目設定が導入された。 さらに、この三年の間に法改正された部分が修正された。その結果が、180項目にも及ぶ膨大なチェックリストになったのである。

当協会も、更新手続きの申請を5月中旬に行っている。立入り調査がいつになるかは未定であるが、この夏に実施されることは間違いない。認定機関の更新をクリヤーできる自信はある。しかし、これを契機に、さらに高質な健診、より精度と信頼が保証される健診に向けて、惜しみない努力を積み重ねたい。 同時に、受診者の利益に反する健診を淘汰することも、この制度の大切な役目である事を忘れてはならない。

(健康かながわ2002年6月号)
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