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学校検診シリーズ①尿検査

image神奈川県は全国に先駆けて学校検尿を行い全国的な評価を受けてきた。近年では、それらに尿糖検査を加えたシステムが成果をあげてきた。しかし、せっかく早期に発見しても糖尿病は自覚症状がないために治療を中止して20代、30代になって失明したり人工透析なる人がいるという。学校検尿システムの成果と今後の展望について松浦信夫・北里大学医学部教授と菊池信行・横浜市立大学医学部小児科医師にお話を伺った。

糖尿病の合併症が進むと失明したり、腎機能不全で人工透析をするケースや神経障害から手足の切断などが起こる。現在、毎年大人が失明する数は4,000人、人工透析をする人は11,000人以上であるといわれている。このうち糖尿病からの人が一番増えているのである。

20年ほど前に日本経済はバブル期に入ろうとしていた。そのころから子ども達のからだに変化が起きていた。肥満児の増加が話題になったのである。それだけではない。肥満傾向だけでなく小児期の糖尿病患者が増えてきたことが分かったのである。
従来、こどもの糖尿病はインスリンを作り出すことができずに血糖値が高くなるインスリン依存型(1型)が代名詞のように使われてきた。ところが近年になって、食生活の欧米化に伴い肥満症や運動不足など生活習慣を背景とするインスリン非依存型(2型)糖尿病が急速に増えてきた。この2型糖尿病の多くは尿糖検査で発見することが可能である。

幸いなことに日本では学校検尿の制度が確立されている。昭和49年から腎疾患の尿スクリーニングが全国的に実施されている。神奈川県では早くからこの学校検尿の制度に尿糖検査を加えたシステムを作ってきた。その先駆者になった横浜市は横浜市医師会と話し合い、学校検尿の制度を活用して糖尿の検査を実施するシステムを作った。図のように横浜市の糖尿病検診システムは成立っている。

2型糖尿病は自覚症状がない。尿の中に含まれている糖を検査しなければ分からない。そのために学校検尿で検査をする制度は早期発見の場として非常に有効である。菊池信行・横浜市立大学医学部小児科医師は、横浜市の2次検査および精検の担当医である。「この20年の間で学校検尿で発見された糖尿病患者が2倍に増えている」とその実態を指摘する。

親と子に糖尿病と結果を説明

菊池医師は「早期に発見して治療すれば有効なのですが、その一方で2割から3割のケースは継続治療を中止してしまう」と残念がる。そして、5年、10年して「20代、30代の働き盛りに失明したり、人工透析になる人が増えている」と事後フォローの大切さを強調する。そのため1次検査・2次検査を実施している神奈川県予防医学協会で尿糖が陽性になった子供と親に糖尿病と検査結果の意味について説明の場をもうけている。

学校保健法では平成4年度から尿糖検査が全児童・生徒に義務づけられたので全国の各自治体で実施されるようになった。しかし、全国の実態調査では2型糖尿病の多くが学校検尿で発見されているにもかかわらず、その後の診断、治療体制が充分でないことが判明した。

神奈川小児糖尿病研究会を設立

神奈川県では10年前の平成2年4月に松浦信夫・北里大学医学部教授が神奈川県医師会と県教育委員会の協力を得て、学校検尿検査の予後の体制を確立するために「神奈川小児糖尿病研究会」を創設している。

神奈川県の特色は従来から腎疾患に関する事後システムが作られていること。横浜市、川崎市、藤沢市など糖尿病管理システムが運営されているところはそれを継続して、その体制がない地区は「腎臓病検診判定委員会」に神奈川小児糖尿病研究会の糖尿病専門医師が県下の判定委員会に加わっている。年間約100万人の学童の検尿で発見される尿糖陽性児の診断、治療の体制が神奈川では整っている。

(健康かながわ2002年7月号)
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