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学校検診シリーズ③心臓検診

学童の心臓検診に全国で一番早く取り組んだのは大阪である。昭和34年ごろである。神奈川県では横浜市が昭和37年から小学校4年生を対象にした心臓検診を実施した。
当協会が心臓検診に取り組んだのは昭和41年の川崎市が最初である。市立の小・中・高の全学童を対象とした大がかりな検診であった。

八代公夫・北里大学名誉教授は、日本で心臓検診が小学校から始まった背景を次のように話した。まず最初の目的は「突然死の予防」である。当時の学校現場ではマラソンや競泳など激しい運動の後に突然死が起きることが多く問題となっていた。2つ目はかくれた「先天性の心臓病の発見」である。学校での突然死の原因は先天性の心臓疾患の子ども達がほとんどである。突然死を予防するためには、まず先天性心疾患の学童を早期発見し管理していくことが大切である。  3つ目は学校医が児童・生徒の健康診断で「心臓の雑音」を発見することがある。校医は小児心臓病の専門医ではないことも多く、無害性の雑音でも管理されていたケースもあり、2次検査で診断をする体制が求められていた。4つ目は「不整脈の発見」である。不整脈も突然死の要因になるからだ。

八代北里大名誉教授は「心臓検診は、①問診を行い、②校医が聴診器で診察し、そして③心電図で診断する。これが1次スクリーニングです」という。「そして所見のある生徒は直接レントゲンで診断する。これが整って、心臓検診と言えるわけである」という。

川崎市

川崎市は県内でも心臓検診に早くから取り組み、その成果を上げて来ている。特徴は川崎市医師会学校医部会・心臓病判定委員会が中心となって活動している。判定委員は、3次検診病院の小児科・内科の循環器専門医と医師会からの専門医同人数ずつ構成され、原則としてメンバーの大きな変動はしていない。そして「教育委員会、判定委員会、学校現場、検査機関」との連携がスムーズに運営されている。1から3次検診の未受診者に対しては、翌年再調査して受診をうながしたりして管理指導にも力を入れている。死亡例についてはその症例のデータを持ち寄ってそのつど検討している。「判定委員会発足以来、見逃したり管理上の問題で突然死が発生した例がないのは,その成果か」と山下行雄・判定委員は言っている。

横浜市

幸いなことに、神奈川県はこのように早くから心臓検診のシステムが整えられたといえよう。それでは、心臓検診が行われたことによって突然死は本当に減ったのであろうか。横浜市は早くから心臓検診に横浜市学校心臓検診検討委員会が取り組んできた。医師部会員が区の専門医を選定し心電図を判読する1次検診のシステムができあがっている。有所見のあった生徒は横浜市が依頼している心臓専門医のいる2次検診の機関で最終的な診断が行われる。横浜市の心臓検診に関わっている柴田利満・しばた医院長に尋ねてみた。

柴田医師は「この点について昭和59年をピークに突然死は減少したと指摘する人もいますが、突然死は100万人に4人といわれています。このうち3人が心臓病と関係しています」と言う。このように突然死は数が少なく統計として数値で示すのは難しいが、突然死を起こす疾患が検診で発見され管理治療されているので突然死予防には貢献していると言える。

事後管理が大切

心臓検診は心疾患の早期発見、突然死の予防が目的であるが、同時に、検診後の管理や指導のあり方も重要である。  中学・高校では先天性の心疾患が発見されることは少なく、川崎病の後遺症や術後の管理がされていない生徒もいる。これらが心臓検診で見つかると、「心臓病管理指導表」の管理区分を判定し、保護者や学校に渡し健康管理を行っていく。このため過去にあったような「原因が分からずに突然死」ということはなくなってきている。「これは心臓検診の成果といえます」と各先生は指摘する。

(健康かながわ2002年10月号)
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