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早期乳がん発見のためのQ&A -県内初のマンモグラフィ検診車を当協会で導入―

imageこのほど(財)神奈川県予防医学協会に、神奈川県内初のマンモグラフィ(乳房X線撮影)検診車「すこやか号」が納車されました。これは神奈川県の協力を得て、宝くじ協会からの補助で購入されたものです。

平成12年3月、厚生労働省は「がん検診実施のための指針」を改訂し、乳がん検診は、視触診にマンモグラフィを併用した方法の導入を謳っています。それを受け横浜市では昨年10月より50歳以上の対象者に医療機関でのマンモグラフィ併用の検診が導入されました。しかし横浜市のようなマンモグラフィ導入には精度管理上いくつかクリアしなければならない課題もあり、検診車の要望も多数聞かれました。それに応えるため当協会では、関係機関のご協力のもと整備を行いました。今回は、マンモグラフィの検診効果や意義などについて当協会の婦人検診部の有田英二医師に、Q&A方式で話をうかがいました。(編集部)

Q、なぜマンモグラフィによる検診なのでしょうか?
有田 現在、日本女性のがんの罹患数の第一位は乳がんです。乳がんは増加傾向にあり、毎年約3万5000人が乳がんに罹り、約30人1人が乳がんになると推測されています。しかし早期に発見し、治療を行えば治るがんなのです。  
これまでは自己検診や医師の視触診による検診でしたが、それでは限界があるといわれ、欧米で有効であるとされるマンモグラフィ検診の導入が検討されたのです。そして厚生省(現厚生労働省)による「がん検診の有効性評価に関する研究」では、マンモグラフィの導入が欠かせないと報告され、「マンモグラフィ導入による乳がん検診の精度管理の確立に関する研究」では50歳以上の女性に2年に1回の視触診との併用検診が提言されました。現在は、40歳代からのマンモグラフィ導入も検討され始めています。

検診の目的は、第一に早期発見し、乳がんによる死亡を抑えること。第二に乳房温存療法などQOLを高く維持することが挙げられるのです。そのためにも有効とされるマンモグラフィ併用による検診が必要とされます。

imageQ、ところでマンモグラフィとはどのようなものですか?
有田 乳房のX線撮影のことで、乳房は乳腺や脂肪など柔らかい組織でできているため、乳房専用の装置を使ってX線写真を撮影するのです。乳がんをはじめ乳房にできる病気のほとんどを見つけることができ、触れてもわからない微小な腫瘤、また腫瘤となる前にも微小な石灰化画像として発見することができます。
検診で異常がなくても、次の検診までの間に乳がんが見つかることがあります。これを「中間期乳がん」といいますが、今までの視触診では中間期乳がんは乳がん患者の約30%ですが、マンモグラフィを使うと10%以下に減るといわれています。

Q、なぜ乳房の圧迫が必要なのですか?
有田 マンモグラフィ検査では乳房を挟んで写真を撮ります。乳房は人により厚みも大きさも違うので、正しく診断するため乳腺や脂肪組織の細かい部分まではっきりと写す必要があります。そのため乳房をなるべく均等に圧迫し、X線の透過性をよくして撮ることが重要となるのです。

Q、撮影の技術や読影診断が重要になってくるのですね。
有田 そうですね。このマンモグラフィ検診では、機器(装)の精度、技師の撮影能力そしてその写真を見て診断する医師の読影能力が不可欠で、高度な専門性が求められています。そのため日本乳癌検診学会、日本乳癌学会など6学会で「マンモグラフィ検診精度管理中央委員会」が組織され、その委員会では講習会と試験があり、認定をしています。当協会では私も含め放射線技師もその認定を受けています。また当協会はその認定施設でもあります。

imageQ、来年度よりマンモグラフィ検診車を導入することになりましたが、期待することは何ですか?
有田 京都府では医師会を中心にマンモグラフィ講習会を開催し、進んで読影医師や撮影技師を育成して京都府全域で施設や検診車を使ったマンモグラフィ検診の導入が進んでいます。

神奈川県の場合、横浜市では昨年10月より施設でマンモグラフィ併用検診が始まりましたが、県域では一部を除いてまだ実施されていないのが実状です。マンモグラフィ検診に適した施設が少ない地域などでこの検診車を活用していただいて京都府のように県全域でこの検診が普及し、乳がんの早期発見と乳がん患者の生存率の向上につなげることができればよいですね。

Q、今回の導入で、ぜひ伝えたいことがありましたら
有田 マンモグラフィだけで乳がんが100%発見されるかというと、そう言いきれない面もあります。ただし冒頭で話しましたように手に触れない非常に早期な乳がんを発見することができ、欧米では有効性が認められスタンダードになっている方法です。 ぜひマンモグラフィ検診を受けていただきたいです。特にこれまで1度もマンモグラフィ撮影をしたことがない方は受けてほしいですね。そしてこれを機会に乳がんに対しての関心を高め、視触診による自己検診にもつとめていただきたいと思います。

(健康かながわ2002年12月号)
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