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スポーツの突然死を予防する③

前々回で突然死の例、前回で年齢別頻度をみてみました。今回は、いかに的確に有効な治療に結びつけるかという話です。
心臓病の代表である虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)は漸増しており、冠動脈の内腔が徐々に狭くなるタイプよりも、粥状硬化が破綻して一気に詰まる急性冠症候群(Acute Coronary Syndrome =ACS)が多いのです。急性心筋梗塞を起こした人の半数近くが、検診を含めて直前の安静時心電図にその兆候がありません。病院到着前に心肺停止(心臓が止まる)した人の40-70%が心臓病で、さらに心臓急死例の70%がこのACSです。

ACSでは、詰まってから再び血液が流れ始めるまでの時間が生き死にの分かれ目になります。胸の圧迫が5分以上続いたり、息苦しい、気が遠くなる、めまいなどがでたときは、"心臓の発作のかもしれない"と考え、一刻も早くしかるべき病院へたどり着くことが大事です。もし意識がない、呼吸をしていないなどの症状があれば、救急隊の到着まで、ご家族、周りの人は、by stander CPR((居合わせた市民による蘇生)を是非行ってください。
この一次救命措置は、米国心臓協会ガイドライン2000が世界基準となり、日本も受け入れましたので、指導団体によって、蘇生手順が異なることはなくなりました。

今後、市民による一次救命措置が浸透してきますと、市民による除細動(Public Access Defibrillation)も視野に入れていく必要があります。 日本循環器学会でも、そのように提案されてます。1992年アメリカ心臓協会(AHA)のCPRガイドライン改定で、心臓突然死の救命率向上にパブリックアクセス半自動除細動器(AED)の使用の有用性が示され、人の多くあつまる主要な空港、ラスベガスのカジノに設置されました。カジノの警備員によるAEDの使用により、AEDによる除細動までの時間が4.4分±2.9分であり、パラメディックの到着を待って行う除細動よりも9.8分±4.3分よりも早く、救命率向上(59%生存退院)に寄与しています。
アメリカン航空の使用実績から見て、誤作動については、正常心電図の人にAEDを装着しても問題がないとされています。(兵庫県立健康センター河村剛史所長談)

また、国立循環器病センター北村惣一郎総長によりますと、運動中の心肺停止の蘇生率は10%以下という統計であり、交感神経の不安定、脱水などの血液濃縮、ストレスなどが加わると血栓を生じやすくなり、左冠動脈主幹部などに閉塞がおきれば心原性ショック、さらに致死的不整脈(心室細動など)を惹起します。一方、右冠動脈が主病変であれば、刺激伝導系(心臓のリズムを作っている)の障害で、徐脈を生じる可能性があります。一次救命措置の普及のみで、蘇生率が上がるわけではないですが、少しでも寄与できるよう訓練を受けておくことは大事です。(精密総合健診部長・羽鳥 裕)

神奈川県予防医学協会の循環器外来

image神奈川県予防医学協会では、健診だけでなく、隠れた疾患を予防する、未病、加齢現象に対しても積極的に立ち向かう、という趣旨から運動療法、栄養指導などを受け付けております。(写真は同外来での呼気ガス分析併用運動負荷試験、写真左が筆者・羽鳥裕 精密総合健診部長)

虚血性心疾患、致死的不整脈を100%予測することは現在の医学では難しいことです。脳血管障害、冠動脈疾患、末梢性動脈閉塞など動脈硬化を基盤とするMULTIPLE RISK FACTOR SYNDROMEの発症を予防するための一つとして、総頸動脈などのIMT(内膜中膜複合体厚)、脈波速度を用いた動脈硬化度の測定、呼気ガス分析併用運動負荷トレッドミル検査、身体組成、ライフコーダによる消費カロリーと運動強度の測定、摂取カロリー調査などを用いて、個人別の運動処方と栄養・生活指導を行いますので、お気軽にご相談ください。

(健康かながわ2003年4月号)
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