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子宮がん検診改正のポイント -第28回がん集団検診研修会

神奈川県都市衛生行政協議会(会長=逗子市)、神奈川県町村保健衛生連絡協議会(会長=大磯町)と神奈川県予防医学協会の共催による第28回がん集団検診研修会が、8月20日、逗子市保健センターで開催され、当日は県下34市町村および県の担当者など関係者67人が参加した。

今回のがん検診指針の主な改正点は、①乳がん検診は、40歳以上を対象とし、視触診とマンモグラフィ(乳房X線撮影)による検診を併用(40歳代はマンモグラフィ2方向撮影)する、②子宮頚がん検診は、対象を20歳以上とする、③検診頻度はいずれも2年に1度とする、というもの。講演の第2部として子宮がん検診をめぐり、当協会の婦人検診部の岡島弘幸部長が「子宮がん検診の改正のポイントとその背景―子宮がん車検診35年間の成績から―」をテーマに講演を行った。

検診の現場から

指針では、検診の実施:「子宮頚部の細胞診及び内診とし、必要に応じてコルポスコープ検査を行う」となっていますので、まずはこのことから、検診の現場でどんな検査を行っているかを紹介します。細胞診では子宮膣部と頸管からサイトピック又はブラシを使って細胞を採取し、これを検査します。
子宮頸がんが発生しやすい場所は、子宮頚部粘膜の扁平上皮領域と円錐上皮領域の境界面です。こうした膣部粘膜の観察用に、「コルポスコープ」という実体顕微鏡を用います。コルポスコープで観察すると、早期がん(0期がん)の場合、普通の扁平上皮領域より盛り上がった、白色の病巣としてわかります。

指針では「コルポスコープは必要に応じて行う」となっていますが、実際には細胞診とコルポスコープを併せた方が、より精度の高い検査が行えると考えています。

早期がんの治療方法

検診によって発見される子宮頚がんは現在80%以上が0期、Ⅰa期の早期がんです。早期に発見し治療を行えばほぼ完治します。早期がんについてはほとんどの場合、レーザー手術を施します。レーザーの高熱で凝固しながら組織を焼き切るので、出血の心配もなく、翌日には退院できます。入院の経費も安くすみ、費用効果も狙えます。レーザーで焼き切った部分はドーム形の欠損部ができますが、2カ月後ぐらいにはきれいに回復しています。「子宮の入り口に穴が空いて大丈夫か?」と心配する声もありますが、妊娠初期にレーザー手術を受けて無事に出産した例もあるので、それほどナーバスにならなくても大丈夫です。むしろ、これから出産を希望する若い女性にとって、子宮を摘出することなくがんを完治し、正常人と全く変らない人生を送ることができることを考えれば、QOLの維持という大切な観点から大きな福音です。

子宮がん車検診35年間の流れ

神奈川予防医学協会では、県下5大学と県立がんセンターの指導のもとに、昭和43年から子宮がん車検診をスタートしました。平成14年8月まで総受診者数は、189万6,317名に達しましたが、35年間の実績の分析はいろいろなことを教えてくれます。年度別の受診状況を見ていくと、昭和43年当初は2,957人でしたが、年々増加していき、昭和55年には8万3,855人に達しました。この頃は、老人保健法が制定され、今後10年間にがんの死亡率を30%下げようと大キャンペーンを行っていた時期だったこともあり、受診者が増えていきました。

平成に入ると次第に受診者が減り、平成10年には初診者の受診率が18.3%と底を打ちました。しかし、それを境に初診者の受診率は再度上昇し、平成14年には30.2%まで回復しています。受診率を押し上げている原因は、若い人達の初診の割合が増えたからです。

異形成発見率の推移

image子宮頸がんの多くが、性感染症であるヒトパピローマウィルス(以下HPV)が関与していると言われています。HPVはイボのウィルスで、現在DNAのタイピングにより100種類くらいのサブタイプが分離されていますが発がん性のある高リスク型はタイプ16、タイプ18、タイプ33など、ごくわずかです。このウィルスに感染すると、核の周りが壊死を起こしてコイロサイトーシスという特徴的な形を示しますので普通の顕微鏡でウイルスに感染したかどうかがわかります。またHPVに感染した細胞の核は前癌状態の「異形成」の所見を示します。

私どもの協会が行った「車検診での異形成発見の推移」を見ると、異形成の発見数は昭和55、6年頃から年間80~100名程度で検診を続けていても減少傾向がみられません。また発見率は35年間徐々に上昇をつづけており、特に平成10年以後0.17%から0.28%急上昇しています。

異形成発見率上昇のカーブを裏付けるようにコイロサイトーシス検出率のカーブも平成10年0.04%から0.15%に上昇していますから、HPVの感染増加が背景にあると考えてよいでしょう。  異形成は、検診を継続しても減少傾向に転じません。初診の発見率は再診の2-3倍は高いので、初診者にいかに検診を受けてもらうかが大切です。

一方、子宮頸がんの発見率は、車検診が始まった頃は0.33%と高い数字を示していましたが、検診を受けることにより異形成の段階で発見される症例が多くなり、平成8、9年ごろには0.04%と下がりました。しかし、最近再び上昇傾向にあるので注意が必要です。

今後の課題

「異形成・子宮頸がんの年代別発見率(平成14年度)」では、初診の20~30歳代といった若い世代が50歳代の10倍以上と高い発見率となっています。若い世代はHPV感染が関係した発がん、高齢者は加齢による発がんと捉えて、発見率の高い年代に焦点を当てながら、今回の改正点である「同一人物については2年に1回行う」については、全年齢層を画一的に考えることなくどう配分するかを考えなければいけません。世代によってアプローチが変わるため、各自治体で思案のしどころです。

(健康かながわ2004年9月号)
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