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健康日本21 中間評価の暫定数値

2000年の調査時より若い女性の「やせ」や男性の肥満が増加し、日常生活での歩数は減ってきている―こんな傾向であることが厚生労働省のまとめでわかった。厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会が10月18日に開催され、健康日本21の中間評価を進めるため、直近の実績値を示した。それによると目標値に届かず、4割ほどが逆に離れていた。この主な直近の実績値を紹介するとともに、この現状と照らし合わせ、神奈川県での状況と今後の進め方について「かながわ健康プラン21」をまとめた東海大学医学部地域保健学の岡崎勲教授にお話を伺った。

image健康日本21は1970年代から始まった第一次、第二次の「国民健康づくり運動」に続いて2000年に策定された。欧米での「ヘルシーピープル2000」(米)や「ヘルス・オブ・ザ・ネーション」(英)など成果の上がっている政策を参考に、健康寿命を伸ばすため、2010年までに達成すべきものとして、初めて数値目標が盛り込まれた画期的なものであった。

健康日本21は、①栄養・食生活、②身体活動・運動、③休養・こころの健康づくり、④たばこ、⑤アルコール、⑥歯の健康、⑦糖尿病、⑧循環器病、⑨がん―という9分野、70項目にわたって目標を掲げている。来年度に中間評価をまとめ、今後の施策を出すこととなっている。今回、その中間評価へ向け、厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会で直近の数値が示された。

それによると数値把握ができた53項目のうち、最終目標を達成しているものが「牛乳・乳製品の摂取量」と「死亡エネルギー比率の減少」。前回の調査よりも少しでも改善したものが29項目、同じは2項目、それ以外の20項目で数値が悪化していた(表参照)。

特に15%以下が目標となっている「20歳代のやせ」と「20歳~60歳代の男性肥満」がそれぞれ26.4%、29.4%と目標から大幅に離れ、前回調査に比べて5ポイント悪化していた。「日常生活における歩数の増加」では成人、高齢者ともに男女とも減少し、目標よりも1500歩前後離れてしまっていた。またアルコールでも日本酒で一日3合以上飲む多量飲酒の割合も男性は2倍近い7.1%まで増加している。

10月27日から松江市で開催された日本公衆衛生学会でもメインシンポジウムは「健康日本21の中間報告」で、「中間評価の実績値に一喜一憂せず、評価結果を計画の後半に活かしていくことが重要」と報告があり、成果が上がっていない項目には新たな施策の必要性も訴えられた。
一方、「健康日本21」地方計画も都道府県レベルではすべて策定されているが、市町村をみると全体の4割程度。しかも策定数とほぼ同程度の4割が策定するかどうかも「未定」と回答があった。 神奈川県では、33市町村のうち11市町村が策定済みだが、13市町村が未定と回答。残りの9市町村はこれから策定予定だ。

神奈川県は将来の日本の縮図 -岡崎勲・東海大学医学部教授-

image健康という視点に立った場合、神奈川県の大きな特徴は全国平均の5年、10年先を行っている感があります。
例えば今回の直近の実績値で問題になっている「20歳代のやせ」の問題。「かながわ健康プラン21」を策定した時点で、もう既に27%を超え、現在の実績値を上回っていました。昨年度の県民健康・栄養調査中間報告では30%まで進んでいます(図3)。また心疾患が全国の中でも高く、横浜・川崎市は東京23区よりも高いというデータもあります(図1)。ある意味、神奈川県の動向が将来の日本の縮図となっているともいえます。

今回の「健康日本21」実績値と照らし合わせて考えてみると、まず成人に対してですが、「代謝症候群」への対策を早急に立てていく必要があるでしょう。肥満、高脂血症、耐糖能異常など策定時よりも増加しており、食事、フィジカル・アクティビティなどの面から効果のある対策を講じる必要があるでしょう。この症候群の本質はインスリン抵抗性であり、これは発がんにも通じているのです。

それに関わって「朝食の欠食」の問題。これは特に若い世代、男性ばかりでなく若い女性も増加しています。これは冒頭に述べた「若い女性のやせ」の問題にもつながるもので、「若い女性のやせ」の問題は特にキャンペーンをしていく必要があると思います。

発想を変える

imageではどのように対策をしていくか。まずこれから出てくる数値を的確に評価をすることから始まるのでしょうが、根本的に考え方を変えていかなければいけないのではないか思っています。
例えばBMI25以上が肥満と判断されますが、25未満であっても高脂血症、高血圧、耐糖能異常などがあれば「代謝症候群」と捉え、欧米などよりももっと明確にキャンペーンをする必要があります。

がんについてですが、男性では肺・胃・肝・大腸がん、これに女性の乳・子宮がんがメジャーながんといえます。しかしせいぜいがんの7割で、あとの3~4割はこれ以外のがんです。そう考えた時、がん検診の取組みを根本的に変えて考えなければならないのではないかと思っています。

例えば総論的に体のどこかにがんが発生していないかを検査する。何らかの異常があった時、各論としてどこに発生したかを見つける、といったようにブレークスルーして考える事も発想として必要ではないかと思います。

若い世代と働く世代に

image別の角度から年代別に考えましょう。
乳児期、小児期は、若い両親に食事の質の正しい情報をどう伝えるか、そして肥満や高血圧などいわゆる「成人病」的なものに対しての対策を考える。  若い世代には「若い女性のやせ」問題だけでなく、たばこの問題もあります。40~50歳以上の中高年の喫煙率は低下していますが、若い男女の喫煙率は増加し、特に神奈川県の20歳代女性の喫煙率は、21.7%で、全国平均の17.4%を上回っており、将来の日本の状況が見えます。

あわせてHIVも含め、性感染症(STD)が不気味な勢いで増えています。健康日本21の項目とは別ですが、今後必ず問題となってくるので県としてどのような対策を講ずるか考えておく必要があるでしょう。

最後に30歳代~40歳代ですが、やはり「代謝症候群」を念頭において実際に働く職場での対策をさらに進める必要があるでしょう。食事、運動の面それに現在はメンタルヘルスの問題がクローズアップされてきています。  こうしたこれから日本を担っていく若い世代に対しての対策を最重点項目として考えなければならないと思います。

(健康かながわ2004年12月号)
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