情報サービス
前のページへ戻るHOME > 情報サービス > 健康かながわ > バックナンバー > うつ病の時代 うつ親和性格
健康かながわ

うつ病の時代 うつ親和性格

うつ病増加の背景には、うつ病になりやすい「うつ親和性格」といった人たちと、現在の時代背景・特に社会経済環境とのミスマッチがあるようだ。うつ病の増加と社会環境との関係について、本紙コラム「よくわかるメンタルヘルス」の筆者で、横浜労災病院心療内科部長・江花昭一先生に寄稿いただいた。

現代は「うつ病の時代」と言われています。うつ病についての知識が広まり、精神科や心療内科のクリニック数も増え、そこを受診する人の数が多くなったこともその理由のひとつでしょう。しかし、現代社会でうつ病になる人の絶対数が増加していることも事実だと思います。 なぜうつ病の人は増えているのでしょう。

自分もうつ病であって、その中でライターという仕事をされている上野玲さんが書かれた『明るいウツウツ生活』(しょういん刊、2004)という本があります。その解説でも述べたことですが、うつ病になりやすい人の性格と時代背景のミスマッチが関係しているのかもしれないと思っています。
うつ病になりやすい人には特定の性格があります。一概には言えないのですが、多くのうつ病の人の人柄は、「うつ親和性格」です。これは、几帳面、生真面目でもあり、また何でもやり遂げないと気がすまないというものです。義理堅く良心的で、遣いすぎるぐらい人に気を遣う人ですね。

imageこのような性格の人は、日本社会の中で、どう暮らしてきたのでしょうか。 真面目、努力、親切が評価されない社会で 高度経済成長の時代の日本は「ワーカホリック(仕事中毒)」社会でした。そこで働く人は、有頂天にもならず、落ち込みもせず、会社と一体となって黙々と仕事をしました。 年功序列、終身雇用社会でしたので、それこそ「一所懸命(一つ所に命を懸ける)」の世界でした。真面目、努力、親切が評価される社会だったので、「うつ親和性格」の人は、過剰に適応しすぎて疲れることはありましたが、おおむねうまく適応できていました。

このような努力で日本経済は成功を収め、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などとおだてられました。バブルの時代が到来したころには、お祭り騒ぎのような「軽い躁病」のような時代になっていました。 このような時代では、几帳面、生真面目な「うつ親和性格」の人は、「根暗」と言われても裏方として社会を支えていて、それはそれで自分を評価することができました。

そして現在。バブルははじけ、軽躁の時代は終わりました。しかし真面目や努力が評価される社会には戻らなかったようです。 無理してバブリーな生活を続ける人、ケータイとコンビニの空間に引きこもる人、競争と自己責任の世界でかろうじて糊口をしのいでいる人。個々人それぞれで、社会はチリヂリになったようにみえます。

まずは自分を大切に

このような社会では、「うつ親和性格」の人はとても生きづらいのではないでしょうか。「几帳面、真面目」はあまり評価されず「要領が悪い」と言われたり、「他者配慮、親切」も評価されず人の仕事を押し付けられたり…。 上に立つ人たちは改革の痛みを下に押し付けるばかりで、良心という武器は蟷螂の斧のようです。

これでは、休むに休めない人でもある「うつ親和性格」の人は、疲れの極に達してしまいますね。 真面目を貫けず他者配慮もままならない時代には、どのように対処したらよいのでしょうか。

まず、ものごとに順番をつけ、小さなサイズに限定して取り組む、ということが一つの方法かもしれません。 まず自分を大事にしましょう。次に家族や友人を大事にしましょう。こう言ったら怒られるかもしれませんが、会社や世間はその後です。人間関係でも八方美人にならないことです。10人いれば一人二人は自分とウマが合わない人がいるのでしょうが、同数だけサポーターは存在するものです。 仕事も、まず重要な1、2割から手をつけ、次にもう一段階進む、という要領です。失敗しても、反省はその点だけ。一回だけにして、後まで引きずらないようにしましょう。

休むことと仕事を同時にこなすことは無理だと気づき、疲れたら休むようにしましょう。これが、真面目、良心、気配り、親切などが大いに評価される社会が復活するまでの間、「うつ親和性格」の人が生き延びる知恵ではないでしょうか。

(健康かながわ2005年2月号)
中央診療所のご案内集団検診センターのご案内