厚生労働省(保険局国民健康保険課)は「国保ヘルスアップ事業個別健康支援プログラム実施マニュアルVer1」を公表した。国保ヘルスアップ事業とは、生活習慣病を予防・改善するための「個別健康支援プログラム」を、各市町村で開発・実施し、その有効性を検証するもの。全国では、2002年度に8市町、03年度に11市町村がモデル事業の指定を受けている。これらのモデル事業のデータは、厚労省の評価検討会で、分析・評価したうえで、個別健康支援プログラムが確立されていく。
マニュアルの中で優れた10例のプログラムが紹介された。プログラムの選出は、効果性、汎用性、経済性、継続性、波及性の5つの観点から検討された。優れたプログラムには共通点がある。個別相談を取り入れた個人対応支援をしている、個別と集団を組み合わせ効果の維持継続の工夫がされている、食生活と運動を組み合わせているなどである。17年度から、マニュアルに沿った一般事業「国保ヘルスアップ事業」が始まる。
藤沢市で行ったモデル事業の個別健康支援プログラムは、優れた評価を受け、17年度から一般事業として実施することとなった。
そこでこのプログラムを作成・実施している藤沢市保健医療センターの小堀悦孝所長と国保ヘルスアップモデル事業担当の鈴木清美保健師にお話を伺った。
藤沢市の個別健康支援プログラムは、「個別相談を軸に、既存保健事業を活用しながら多様な参加形態を可能とする“総合支援型のプログラム”」である。
○プログラムの特徴
藤沢市が14年度から取り組んできた国保ヘルスアップモデル事業には2つの大きな特徴がある。1つは、年1回の健診後の健康相談を軸として、年度毎に参加者と支援者が話し合って個人目標を設定し、それを実践につなげていくための健康づくり支援メニューの中から選択するもの。個人へのアプローチと集団へのアプローチを組み合わせることで、生活習慣改善支援がより効果的になるよう設定されている。
2つは、参加者が自身の目標や状況に応じて支援メニューを選択し、生活習慣改善に向けた知識・技術の習得や実践ができる主体性を尊重した柔軟な総合支援の仕組みである。
○2年間の実施評価
コース1(健康相談)は身体状況の改善は認められないが、生活習慣の改善がみられた。コース2(健康相談+食生活相談+集団教室)は食生活改善による、体重・BMI・脂質代謝・糖代謝の改善がみられた。コース3(健康相談+運動実践+食生活相談(任意)+集団教室)は体重・BMI・血圧値・総コレステロール値の改善がみられた。
○プログラム作成・実施の重要点と課題
藤沢市がこのプログラム作成や実施において重要な点は
①藤沢市の保険年金課と市民健康課が一体となって実施体制を組むことができた
②保健・医療・福祉関係の専門職が働く施設(藤沢市保健医療センター)がある
③専用のコンピュータシステムを構築した
④既存の保健事業の実績があった
⑤支援スタッフの熱意があった。
今後このプログラムを一般事業として進めていく上での課題や改善点としては、
①集団教室として、小集団(6~8名)アプローチの積極的活用(強介入の時期を設定する)②コース3については、食生活支援を強化③対面式の健康支援がとれない人を対象としたプログラムの導入(IT利用の通信支援、支援レター郵送、電話相談など)④30歳代への効果的支援方法⑤受益者負担の導入、などが考えられる。
小堀所長は「藤沢市の個別健康支援プログラムは、健診・健康相談、トレーニング・食生活相談という基本的な要素からできています。既存の保健事業をシステムとしてしっかりまとめたものです。このプログラムの内容を十分把握したうえで実施すれば効果は実証されています。今後は高いレベルを目指してやっていくことが必要で、やっとスタートラインに立ったところです」と話された。
また鈴木保健師は「研究的要素のあったモデル事業から本事業になったので、このプログラムをいかに広く皆さんに使ってもらうかがこれからの課題です。今回から健康相談を受けた時点で、同じ目的(例えば“減量”)を持った方を集めて、小集団の教室を行っています。またコース3の方には運動中心になりがちですので、看護職による食生活支援を参加者全員の方に始めています。また忙しいなどの理由で年1回しか来所できないコース1の方にも対面式でなく、もっと違ったアプローチをしていければと目下検討しています」と説明した。