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メンタルヘルス 職場復帰の支援

「心の健康 職場復帰支援手引き」(中央労働災害防止協会編、1,470円)が出版された。これは昨年10月厚労省からだされた「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」をさらに詳しく解説したもの。メンタルヘルスの中核的課題である職場復帰について、さらに理解を深めるために同書での解説を執筆している田中克俊・北里大学大学院助教授(産業精神保健学)に職場復帰のポイントについて話を伺った。

就業規則に基づく明確なルール化を

image今回の手引きは、平成12年に策定された「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を受けて、心の健康問題によって休業した労働者で、「医学的に仕事に復帰するのに問題がない程度に回復した人」を対象に作られました。

本来、職場復帰支援というのは人事上の事項であるにも関わらず、具体的な規定や就業規則に記載がないまま運用されているという点に大きな問題がありました。健康管理だけで決めるのでは様々な不公平が生じるので、ケースバイケースで、会社の就業規則などに基づいた明確なルールが必要なのです。
この手引きは、事業所ごとに合った形で職場復帰支援プログラムを作ったり、そのためのルール作りや、必要ならば就業規則の改変をする時の参考にしてもらうのが目的です。

それでは、職場復帰支援のポイントについて、「主治医による職場復帰の診断書の判断」から説明しましょう。

診断書にも工夫を

主治医からの診断書と情報提供書は別々にもらうように手引きでは書いてありますが、これらをまとめた職場復帰用の診断書のフォーマットをあらかじめ会社が準備して主治医に書いてはもらうのもよいでしょう。

例えば、診断書のデータを健康管理室が管理するなら、病気の途中経過を詳細に書いてもらっても構わないでしょうが、管理者や人事担当者なら、プライバシーに触れる部分は書かずに、安全配慮の部分をメインに書いてもらうことになります。

このように、プライバシーを考慮しながら、誰が管理するのかによって診断書の内容を吟味し、会社の事情に合った診断書のフォーマットを作ることで、主治医との連携もスムーズにいくでしょう。

その際、会社の受け入れの条件や就業規則を添付すると、主治医が診断書に「半日勤務を可能とする」と書いたのに、会社の就業規則になくてできないといったトラブルを回避できます。

次に、復職に当たっての「業務遂行能力についての評価」についてです。
まずは「適切な睡眠覚醒リズムの有無」「安全な運転の可否」などをチェックします。特に睡眠は、脳の働きをを回復させるのにいちばん大切なもので、これができずに心の病気が治ることはむずかしいことなのです。ちゃんと眠れなくて、安全な通勤ができない人を、主治医の診断書だけで職場復帰の判断をしてはいけません。そうしたことを防ぐため、当たり前のことではありますが、少し厳しめに提言してあります。

こまめなフォローが大切

三つめは、「職場復帰後のフォローアップ」についてです。職場復帰の判断をするのは、治療よりも難しいもの。主治医から多くの情報を集めて判断しても、復帰後に何がきっかけで症状が再発・再燃するかは予測できないからです。
再発・再燃をくり返してしまう中には、早めに薬をやめてしまう人や、たまたま症状のいい時期に復職判断された人が多く含まれます。彼らは職場復帰して一~二週間くらいで、ひどく落ち込んだり、疲労感を覚えはじめています。ところが、復職したばかりで休むわけにいかず、我慢してしまう。放っておくと、再発のリスクを高めてしまいます。

これを防ぐためには、こまめなフォローが大切です。職場復帰後、最初はせめて二週間以内に一度は会って話を聞いてあげないといけません。復職判断の面談時間を長くとるよりも、短い時間でもフォローの回数を増やした方が有効です。
なお、現在行われているリハビリ出勤については、注意すべき点がいくつかあります。というのは、現在行われているリハビリ出勤の多くは、まだ復職を認めていない休職中に行われるため、給料は支払われず、通勤途中に事故に遭っても労災は降りません。

さらに、会社にいるのが4時間といっても、往復の通勤も含めるとずいぶんな時間になる。早すぎるリハビリ出勤の開始によって、病状が長引くリスクはたくさんあります。それなら、しっかり休養を取って、会社が定めた労働時間を働けるくらい体力も回復してから復帰させた方がいいでしょう。リハビリ出勤については、くれぐれも慎重に考えてください。

ワークモチベーションを管理する

また、職場復帰支援を進める一方で、全従業員へ向けたメンタルヘルスケアの対策も必要です。なかでも注目したいのが、「ワークモチベーションの管理」です。労働者にとっていちばんストレスなのは、不公平感を覚える時といわれています。これを解消するため、管理職が部下に公平感を与えるスキルを習得させたり、マネージメントの訓練を受けさせます。そうすることで、働く人の心理的報酬を増やして、ストレスを減らします。こうした組織心理的なアプローチのほか、不眠症やうつ病に関する教育や、会社のルール作りと共に、労働者が心の病気になるのを未然に防ぐ取り組みも必要です。

(健康かながわ2005年7月号)
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