情報サービス
前のページへ戻るHOME > 情報サービス > 健康かながわ > バックナンバー > マルチディテクタCT導入
健康かながわ

マルチディテクタCT導入

image神奈川県予防医学協会中央診療所のヘリカルCTがこの8月、マルチディテクタ方式の新機種になりました。当協会二代目のヘリカルCTは、東芝製「Asteion Super4 Edition」。1回転あたり0・75秒で受診者の体内を読み取る全身用X線CT装置の高級機種の一つとされています。撮影時間の短縮で受診者の負担を軽くするほか高精度・高画質の映像が得られるため、一度の撮影で肺がんなどの病巣発見がよりスムーズになります。

受診者にさらにやさしく

わが国で、男性の肺がんでの死亡率が平成5年初めて胃がんを抜いて第1位に、平成10年には全体でも第1位になりました。また、人口の高齢化が進んでいることにより、肺がんの死亡率はこの30年間で急激に増加しています。
その対策としては、やはり早期発見・早期治療ではないでしょうか。国立がんセンター等の研究グループのデータによると、胸部X線撮影と喀痰細胞診による肺がん検診では発見肺がん患者の5年生存率(治療開始から5年間生存している割合)は30~40%である。しかし、ヘリカルCTを使用することによって5年生存率は80%を超えると言われています。このデータは当協会の1万件の検診結果ともほぼ同じ値です。

当協会では平成8年に検診機関として神奈川県内で初めてヘリカルCTを導入して以来、たくさんの方々に受診して頂きましたが、さらなる診断能の向上と受診者の方々の負担軽減のため、本年8月にヘリカルCTを更新しました。
新しく導入されたマルチディテクタCT(以下MDCT)は、以前と比べて性能が大幅に改善されました。以下にその性能の一部を紹介します。

4列の検出器

CTにはX線を発生させ、そのX線を受け取る細長い検出器があります。その検出器からのデータをコンピュータが計算し断面像を表示させています。以前の検出器は1列でした。これはヘリカルになる前のCTと同じです。それに対しMDCTは4列の検出器を有しています。これだけで一度に得られる画像枚数は2・5~6倍になります。また、X線データの収集効率も上がり、低い線量でも従来以上の画質が得られます。さらに、人体の形状により、自動的に不必要なX線をカットする機能もあります(この機能には個人差があり、適用されないこともあります)。

そもそもCTは1970年代に頭部のCTとして登場しました。初期の装置は1回毎に回転して撮影しており1回の検査に30分ほどかかりました。東芝社が1990年スリップリング(電車のパンタグラフの様な装置)を発明し、連続回転を可能にしました。X線装置と検出器が一体となって連続回転する中を寝台が移動します。受診者が動いている状態で周辺をX線装置が回転します。これは、X線はまっすぐ検出器に入っていても受診者が中を抜けるので、斜めに画像が出ることとなります。斜めの画像は直ちに直角の像に補正されて出てきます。これがヘリカルCTといわれています。従来機は1回転1秒でしたが、新機種は1回転0・75秒で回転します。このことにより撮影時間を3/4にし、息を止める時間も10秒間に短縮されました。さらに被爆を3/4にする効果もあり、心臓の拍動による影響も少なくなりました。

アイソピクセル
image
(写真1)肺矢状断
image
(写真2)肺冠状断
image
肺3D画像

新しいCTは、スライスハムのように人体の長軸に垂直な面の画像(横断面)を表示させますが、それ以外にも体の縦切り(写真1、2)や斜め切りも自由に作成できます。これをMPRと言いますが、これにより、さらに詳細に体の内部を診察することが可能です。

CTの基本断面画像は、0・5×0・5㎜を一番小さい面積とする「ピクセル」の集合で表示されています。このピクセルの濃淡が512×512個集まって、断面の画像を構成しています。またそのCTの断面像にはスライスハムのように厚みがあり、新機種ではその厚みを0・5㎜という極薄で撮影することが可能になりました。これが立体で考えたとき、1ピクセルの縦・横・高さの長さが同じになる状態(アイソピクセル)で、MPRや3D (写真3)再構成に非常に最適な条件を備えることとなりました。

モニタ診断

MDCTはモニタ診断に対応し、撮影後すぐに医師の元に画像が転送されます。また、モニタ上に撮影画像が表示されるため、キー操作ひとつで連続的に画像を確認でき、気管支の走行やお互いの位置関係の把握が容易にできます。これにより、スピーディーな読影と診察が可能になりました。

以上より、新しいCTになった利点は、息止めは10秒で被爆は従来の半分近くになり、なおかつ画質も向上し、詳しい読影や診察が受けられるようになった、ということになります。

(健康かながわ2005年11月号)
中央診療所のご案内集団検診センターのご案内