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かながわ健康プラン21-中間評価を読む

厚生労働省は、平成12(2000)年、平成22(2010)年までに達成すべき数値目標を設定した、第3次国民健康づくり運動「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」を策定した。それに伴い神奈川県でも平成13年県民健康づくり運動「かながわ健康プラン21」を策定、今年1月、その中間評価が公表された。
そこで今月号では、長年、公衆衛生に携わってきた当協会の鈴木忠義常勤顧問が、「『かながわ健康プラン21中間評価』を読む」をテーマに紙面をお届けする。

「健康」への関心が高まっている。ウォーキング、食事、サプリメントなど…。過去の世論調査でも「あなたにとって最も大切なものは」という問いの答えの一位はほとんどが「夫の健康」か「家族の健康」であった。
平成12年に国は従来の「国民健康づくり運動」を「健康日本21」と改めて再出発した。衣替えの最大の要素は個々の国民の生活習慣や健康診断の検査値などの現状を数値として明示し、10年後の目標値を定めたことである。そして各県や市町村にもそれぞれ独自の計画を作成することを求めた。

神奈川県もこれを受けて「かながわ健康プラン21」を作成して5年がたち、このほど中間評価を公表した。「かながわ健康プラン21」は7分野、10か条で構成されている、10か条は事業推進のための目的である。
ヒトの生涯を幼年期、少年期、青年期、壮年期、中年期、高年期にわけ、7分野の項目あわせて約150を論理的に配置し、項目ごとに平成10年においての割合や検査項目の平均値がベースライン値として示され、それぞれに平成22年の目標値が示されている。

今回の評価は列挙した項目のおおよそ3割程度について平成15年の数値を取り出して目標値への到達の度合いを検討している。評価結果は次のように表現されている。
評価した項目は38(他にベースライン値、直近実績値がなく評価できない項目が3)達成したもの5、改善したもの23、悪化したものは10であった。

image(1)達成したもの5
「牛乳・乳製品の一日当たり摂取量」は1・4倍になった。
「ストレスを溜めないようにしている人の割合」は男女とも倍増して目標値70%を超えた。歯の健康関連の項目は目標値をわずかに超える数値ではあるが、20%の改善率である。

(2)改善したもの23
興味のある項目を紹介する。
「肥満者の割合(女性)」はやや減少してはいるが目標値には達しなかった。
「未成年者の喫煙経験者(男、女)」は目標値をゼロに設定している。到達は困難と思われるが実績では男女とも7~8ポイントの改善で特に女性は半減している。しかし街中での高校生らしき喫煙は相変わらずである。
「80歳代で自分の歯を20本以上持つ人の割合」は著しく改善したが目標値にはまだ遠いのである。

image(3)悪化したもの10
「肥満者の割合(男性)」「20歳代女性のやせの割合」の目標値は15%以下に設定されているがそれぞれ数ポイント増加した。特に20歳代女性は3人に1人がやせている。将来の母としては考えなければならない。
「未成年者の飲酒経験者(女性)」は増加し、2人に1人を超えた。「健診を受ける人(女性)」は5割以上増やす目標に対して逆にわずかだが減少した。

社会政策的な項目も評価項目にあげられている。
「禁煙支援プログラムを普及する」は全市町村実施を目標に2(5・4%)↓21(56・8%)に増加した。「分煙を推進する」は県・市町村などの公共的施設の禁煙・分煙対策の実施を目標として掲げ4(10・5%)↓20(52・6%)(この2項目は比率から実数を逆算。筆者)。
「かながわ健康プラン21」「健康日本21」は平成15年度の認知度5・9%、17・0%であったが、ベースライン値、目標値がないので達成度は評価できない。しかし本県独自の「かながわ健康プラン21」認知度は低すぎるのではないだろうか。

各ベースライン値、15年度実績値は大部分は県民健康・栄養調査(平成10、15年)であるが、80歳代で自分の歯20本以上は神奈川県歯科医師会抜歯要因調査(平成5、15年)、40歳代の歯周病は県内企業での調査結果(平成12、16年)、禁煙支援は県老人保健事業年報(平成12、16年)、分煙推進は地方自治体庁舎等における禁煙・分煙の実態調査結果報告(平成12、16年)が出典である。
市町村単位の計画は名称もさまざまに趣向を凝らしてすでに横浜・川崎を含む14市5町が策定を終え、3市が策定中、3町が策定予定である。

医療費縮減も視野に

「健康日本21」は「国民健康づくり運動」にさかのぼれば、すでに30年近い歴史がある。ここにきて行政改革のあらしの中、医療費縮減も「健康日本21」の目的の一つになった。
「早期発見、早期治療は国民の大きな幸せである」と信じて官民共同して保健衛生活動は進められた。健康と同時に国家財政に寄与するとなれば二重の達成感であるが、近ごろ早期発見で得られる健康は、所詮治療と介護の先送りではないかという説も出てきた。
予防医学を商品としている当協会は一層の理論構成が必要とされるのである。そしてなによりも健康寿命の延伸が一層望まれる。
(神奈川県予防医学協会常勤顧問・鈴木忠義)

(健康かながわ2006年5月号)
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