情報サービス
前のページへ戻るHOME > 情報サービス > 健康かながわ > バックナンバー > ストレス・コーピング-ストレスに打ち克つ
健康かながわ

ストレス・コーピング-ストレスに打ち克つ

平成18年度神奈川県職員対象のメンタルヘルス研修会が、7月7日に自治総合研究センター・研修ホール(横浜市栄区)で開催された。「ストレス・コーピング-ストレスに打ち克つ-」をテーマに、人間総合科学大学教授で、神奈川産業保健推進センター産業保健相談員の苅部ひとみ先生が講演した。

ストレスとは

imageストレスとは、現在は主として「精神的な緊張や負担」を指すが、実態を的確に表現するのは難しい。例えば職場のストレスは、作業量の多さや内容、通勤時間、人間関係など多種多彩だ。さらに家庭がストレス状態だと、職場で感じられるストレスはより増大する。

だが、ストレスの研究では、ストレスが適度である時、人間は最大の能力を発揮できるとわかっている(図)。

ストレスの大きな特徴として、「ストレスの影響は個人差が大きい」ことがあげられる。ある人にとっては非常に大きなストレスでも、別の人にとっては何でもない場合がある。さらに、個人の資質や能力によってどの種類のストレスに強いか、弱いかも異なってくる。

ストレスには、物理的ストレス、生理的ストレス、心理的ストレス、社会的ストレスなど様々な種類があるが、今回のテーマである「コーピング」に関連するのは、心理的・社会的ストレスのふたつだ。日常ではさらに避けられない急性のストレス、ある程度予測可能なストレス、日常のいらだちに分けられる。

また、ストレスに遭遇した時、私達は次のような反応を示す。
・行動的反応…飲酒、喫煙、薬物、過食または拒食、盗みや放火などの触法行為といった、行動様式の異常。
・身体的反応…自律神経の乱れによる睡眠、食欲、便通などの亢進および低下、全身倦怠、頭痛、めまい、動悸、呼吸困難。出社拒否から歩けなくなった例も。
・心理的反応…イライラ、怒りやすい、不安、緊張、悲哀感、意欲、集中力の亢進および低下のほか、うつ状態やうつ病を含む。
「ストレスをどのように受け止め、どのように行動するかを考えること」を、ストレス・コーピング(stress coping)という。

ストレス・コーピングとその方法

コーピングの前提として、まず現在の自分の状態を確認する。ストレス状況にある時、日常生活に行動面、身体面、心理面で様々な変化が現れる。こうした変化を平常時の状態と比較することで、ストレス状態かどうかを把握できる。
また、ストレスに遭遇すると、「私にはできない」「すべて私が悪い」などの否定的な自動思考に束縛されてしまいがちだが、「どのような思考や感情を抱いているか?」といった客観的な問いを自分自身に投げかけることで、冷静な判断が可能だ。

コーピング行動を起こすための、現在奨励されている具体的な手順は次の通りである。
①ストレス源またはストレス反応を、解決すべき問題として定義
②問題を解決するための現実的な目標を、できるだけ具体的に設定
③できるだけ広範な行為の選択肢を作成
④同じようなストレス問題を処理する際、他の人ならどう反応するかを想像し考える
⑤考えだした解決策のそれぞれの長所と短所を評価。最も実際的で望ましくないものから最も実際的で望ましいものまでを順に並べる
⑥解決方法とその過程や結果について、イメージリハーサルを行う
⑦最も受け入れやすく、実行可能な解決策から試してみる
⑧解決策を試みられたこと自体が評価に値するのを前提に、失敗を予測しておく
⑨問題解決の試みという視点から、はじめの問題を考え直してみる

最後に、再びストレスに負けないために、日頃からメンタルリハーサルを行ったり、ストレスを細分化して今解決すべき問題から取り組むという方法がある。ほか、問題の情報を得るために他の人達と話をしたり、過去のストレス対処技能のレパートリーから、現在のストレス状況に応用できるものを見つけるのも有効だ。どのような失敗も落胆も深刻に捉えすぎに、問題解決の過程を再度やり直すために必要なフィードバックと考えよう。

(健康かながわ2006年8月号)
中央診療所のご案内集団検診センターのご案内