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医療制度改革をめぐる諸問題 第30回がん集団検診研修会

小野康夫氏は、医療制度改革により「受け皿」のひとつとなる国民健康保険団体連合会(以下、国保連)の役割も大きくなってくることを参加者に訴えました。

訪問指導と医療費分析

国保連は市町村のレセプト審査・支払いに65年以上も携わってきました。介護保険料の審査・支払い(平成12年度)、障害者支援費の支払い(15年度)も担当、医療から福祉へと業務が拡大しています。また保健事業の推進では調査研究、市町村間の連絡調整と保健師派遣などを通じて県下市町村の保健事業を支援しています。中でも在宅保健師でつくる「いちょうの会」は、市町村の健康まつりなどに骨密度測定器や体組成計を持って出向き、地域の健康づくりに参画。みなさんにとって身近な活動になっているのではないでしょうか。

保健事業では国保のデータにもとづいた多受診、重複受診の訪問指導、医療費データの分析なども行っています。その一方で、市町村国保、老人保健担当課と「神奈川国保・老健ネットワーク」を構築し、さまざまな帳票のペーパレス化、各種データの提供もすすめています。

広域連合運営に新たな役割

後期高齢者医療制度は、市町村の参加する広域連合が運営することになります。75歳以上の人たちのレセプトの審査・支払いをはじめ様々な電算処理事業を委託していただくようになれば、みなさんと国保連との協力関係はさらに深まることでしょう。また、医療費適正化に向けた取り組みである生活習慣病対策では、40歳以上の被保険者・被扶養者に対する健診・保健指導が義務づけられることにより、保険者、関係者の連絡調整と助言、援助などが国保連の役割として新たに加わってきます。

保険者協議会の設立

健康保険組合、政管健保との関係では平成17年9月に保険者協議会を設立しました。それぞれの保険者が持つ医療費データを分析し、生活習慣病、特に糖尿病などでの神奈川県の特性を把握し、保険者の枠を超えた保健事業の協力・実施をめざしています。数字による医療の特徴がとらえにくい神奈川県で事業を展開するには難しい点も多いのですが、各市町村のご理解・ご協力が何よりの支えになります。

大切なのは神奈川独自の保健事業の展開と同時に、人材保健師の確保と充実が目標です。老人保健法施行(昭和58年)を境に、健康づくりが市町村の業務になってからその数は著しく増加しましたが、多彩な分野を受け持つ保健師の活動は医療制度改革でも重要なポイントです。

体制の見直し・協力関係の強化を

40歳以上の住民を対象とする基本健康診査は、今回の改革で被保険者・被扶養者ともに義務づけられました。保険者は平成20年までに特定健診・特定保健指導実施計画をつくるわけですから、保健師、管理栄養士の増員による直営かまたは外部委託かの選択などの体制づくりは急を要します。各市町村では国保部門、衛生部門のどちらが何を担当するか、といった議論から始める必要があります。

十分な話し合いを重ね、ぜひ、生活習慣病対策を急いでください。国保連もみなさんからの要望に応えられるよう事業内容や体制の検討をしているところです。医療制度改革の実戦部隊になる国保連は、みなさんの支援と協力なしには機能しません。

小野氏の発言ののち、会場から質問を受け講師と発言者が答えました。おもな内容はつぎの通りです。

Q 改正案にがん検診の担当部門の明記がないが? 国・県の補助負担はどうか?
 改正案ではメタボリックシンドローム対象の健診が義務づけられた。がん検診については市町村の衛生部門が引き継ぐと思われるが平成20年度以降のしくみは不明。がん検診の補助金の復活は現段階では難しいと考える。特定健診の負担は国・県・保険者としての市町村になる予定。

Q 生活習慣病の人の行動変容を健康づくりの最終目標とした場合、病気になりやすい人は保険料を高くするなどの区別があってもいいのでは?
 国保保険料の地域差はある。個人の生活習慣の差は考え方としてはあってもいい。ただし、太り気味の人、タバコを吸う人の保険料をどういう条件で算定するかとなると簡単ではないだろう。

Q 市町村国保は、統合再編の流れの中で県単位に集約されてしまうのか?
 保険財政共同安定化事業として国保運営の新事業がこの10月から始まる。すでに80万円以上のレセプトは市町村の拠出運営だが、新たに30万円以上のレセプト分も共同事業となり、県域での一本化の流れはある。

Q 65歳以上の介護予防機能評価は、40~74歳の健診・保健指導とどのように関連するのか?
 65歳以上の健診は老人保健法、指導・教育は介護保険法で定められている。75歳以上の健診は広域連合に対して「努力義務がある」と示されている。平成22年度には65歳以上の基本健診がなくなり、40~74歳を対象とした特定健診になる。今後、介護保険の枠に生活機能、メタボリックシンドロームのスクリーニングが組み込まれる可能性はある。

座長・鈴木 巨大組織の横浜市と国民健康保険の部署から唯一参加の鎌倉市に現在の状況を教えていただきたいと思います。

A(横浜市) 衛生部門と国保部門の協議はようやく始まったばかりです。それぞれの持っている情報の質の違いもあるので、そのすりあわせや進め方について協議をしている段階です。横浜市は大きな保険者なのでどこから手をつけていけばよいのか危機感を持って進めています。

A(鎌倉市) 保健衛生の職員から紹介され、この研修に参加しました。現在、保健師が国保部門を兼務する仕組みになる可能性も含めて保健衛生部門との調整は進めていますが、横浜市と同様どこから手をつけようか? というのが正直なところです。医療費抑制の流れの中で、市民感覚も理解しながら、医療制度改革のポイントなどをわかりやすく市民に伝える役割の大きさを痛感しています。

(健康かながわ2006年9月号)
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