情報サービス
前のページへ戻るHOME > 情報サービス > 健康かながわ > バックナンバー > ピンクリボンよこはまキャンペーン ピンクリボン講演会
健康かながわ

ピンクリボンよこはまキャンペーン ピンクリボン講演会

ピンクリボン運動は、乳がんの早期発見・治療による撲滅を願うもので、アメリカで始まっている。今年から神奈川県予防医学協会でも、10月を乳がん撲滅月間としてピンクリボン講演会や会場のZAIM(横浜市中区)のピンクリボン装飾とライトアップ、そしてさまざまなイベントを通して、ピンクリボンのメッセージを発信した。今回はコスモス女性クリニック院長の野末悦子院長をお迎えした「乳がん―早期発見者からのメッセージ」と題するピンクリボン講演会の内容をお伝えしたい。(NPO法人乳房健康研究会共催、神奈川県・横浜市健康福祉局後援、エイボン・プロダクツ協賛)

増える乳がん死亡者

image乳がんの専門は乳腺外科であるにも関わらず、婦人科医の私が乳がん検診の普及や啓発活動に取り組んでいるのは、かつて私が乳がんを経験したからです。
28年前、乳房のしこりに気づいた私は、神奈川県予防医学協会で当時日本ではほとんど知られていなかったマンモグラフィ(乳房X線撮影)を行いました。乳がんは怖い病気ですが、早期発見・早期治療をすれば、Ⅰ期(しこりが2㎝以下)の場合で10年生存率は90%と高いのです。幸いにも、私のしこりの大きさは8mmだったため、乳がんになってから28年経った今も元気に過ごしています。

ところが現在、乳がんの死亡率は年々高くなっています。日本女性の臓器別がん死亡率を見ると大腸がんが1位。これは高齢者が中心で、35~60歳代の壮年期では乳がんが圧倒的に多いのです。05年には乳がんで亡くなった人は1万人(武道館いっぱいの人)を越え、今後もますます増加すると予想されています。

マンモグラフィの有用性と今後の課題

マンモグラフィとは、乳房専用のX線装置を使って撮影する検査方法。乳房を片方ずつ、板ではさんで乳房を薄く引き伸ばすことで、乳腺の重なりが少なくなると同時に、より少ないX線で撮影できるため、被曝量を減らせます。十分に圧迫された条件のよい写真では、視触診では見つからない小さながんや、早期乳がんのサインである石灰化の発見が可能となります。欧米ではこのマンモグラフィの普及により乳がん死亡者が減少しました。それを受けて厚生労働省も視触診に加えてマンモグラフィを乳がん検診に導入しました。

マスコミなどの影響により、乳がん意識は次第に高まってきました。NPO法人乳房健康研究会の調査によると「乳がんについて知っていること」では、「画像検診を定期的に受けることで乳がんの発見率は高まる」と答えた人は、02年では33・5%だったのが、05年では55・6%に増えました。また4分の3の女性が「マンモグラフィで乳がんが発見できる」と認知しており、「今後、マンモグラフィを受けたい」と答えた人は7割以上でした。

このように認知度は上がってはいるもののマンモグラフィ受診率は05年の時点で12・4%にとどまっています。受診者からは「思ったより簡単だった」という好意的な意見が多い一方、「痛み」「不快」というマイナス意見も増加。デリケートな検査ゆえに「女性技師がよい」という声も半数近くありました。また受診者の増加に伴い事前説明が不足し、4分の1が「受診前に何も説明を受けていない」と答えています。

今後受診率を上げるためには、受診者には痛みや不快さがあれば技師に伝えるよう指導したり、乳がん全般の啓発を行うとともに、検診機関にも事前説明の徹底をはじめとした啓発が必要でしょう。

自己触診のすすめ

乳がん発見法について聞いた質問で「自己触診」と答えた人は90%いましたが、自己触診の実施率は36%と低かったです。しかもその自己触診をしている人で、1ヵ月に1度行っている人は約40%。自己触診をしていない理由で多いのは、「触っても自分ではよくわからない」「自己触診のやり方がわからない」です。

私のクリニックでは、何も指導をしてない状態での自己触診の実施率は41・9%でした。しかし乳がんの視触診とエコー検査の後、自己触診の指導をすると、実施率は83・9%に上がりました。検診はもちろん自己触診の指導にも力を入れるよう医療機関側も努力せねばならないでしょう。

それでは自己触診のポイントを紹介しましょう(自己触診のやり方は図参照)。
①しこりを発見したら乳腺専門の医療機関へ行こう。しこりの大部分は乳房の良性疾患だが、乳がんは3ヵ月ごとにほぼ倍位に大きくなるので、念のため早めの受診を。
②乳首をしぼった際に分泌物がでてきたら要注意。特に血性のものはがんの疑いが考えられる。ただし、血性の分泌物でも必ずしもがんではないので、自分で診断せず専門家に相談しよう。また、ブラジャーの乳首が当たる部分に血がついていた場合もすぐ病院へ。
③自己触診をする時期は、生理のある人は月経の最終日位が、乳房が柔らかく見つけやすい。閉経後や生理のない人は「乳の日」を決めて毎月同じ日にチェックするとよい。
乳がんの早期発見のためにも、年に1度はマンモグラフィや超音波検査を併用した乳がん検診を受け、月に1度は自己触診を行うとよいでしょう。

image

乳がんを正しく知るためのQ&A

最後に、乳がんに関する質問の中で多いものをいくつか紹介する。

Q‥家族に乳がんの人がいなければ大丈夫?
A‥乳がんになった人の約8割はまったく家族歴がないため、安心はできません。

Q‥乳房のしこりは切らないと、がんかどうか診断できない?
A‥超音波検査、マンモグラフィなどの画像診断を行い、穿刺吸引細胞診またはマンモトーム生検(吸引組織診)を行うことなどで、診断のためだけに手術を行なわれることはほとんどありません。

Q‥男性は乳がんにならない?
A‥男性も乳がんになりますが、その頻度は低いです。男性乳がんの平均年齢は65歳で、女性に比べて高齢者にみられます。

(健康かながわ2006年11月号)
中央診療所のご案内集団検診センターのご案内