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健康かながわ

予防医学実務研修会 特定健診・特定保健指導

8月6日午後2時から、県下市町村の保健担当者など60余名を集めて第31回予防医学実務研修会*が開催された。来年4月から医療保険者に義務づけられた特定健診・特定保健指導をめぐり、今後、鍵を握ると考えられる国保連合会の立場から、前・神奈川県国民健康保険団体連合会常務理事の小野康夫氏に基調講演をお願いした。講演後の質疑応答をふくめそのあらましをまとめる。

主催/(財)神奈川県予防医学協会
共催/神奈川県都市衛生行政協議会 神奈川県町村保健衛生連絡協議会
会場/松村ガーデンホール(神奈川県予防医学協会2階)

(編集部)

実施計画の策定、特定健診等の実施をどの課でやるのか? 7月末の時点で大半の市町村が未定のなか、市町村が取り組むべき多くの項目を一覧にした資料をもとに小野講師は、市町村が乗り越えなければならない課題と国保連(保険者協議会)の担うべき役割を説明した。

研修の実施

特定健診・特定保健指導にかかわる研修を市町村や健保組合、共済組合等を対象に、6月26日~7月11日に県下5カ所で実施した。各保険者の関心も高く、延べ506名(市町村からは281名)の参加があった。
今後は11月以降に、県と保険者協議会、国保連が共催し、看護協会のアイデアもいただいて保健師等専門部会で協議を進め、実際的な保健指導技術のプログラムを内容とする研修を予定している(2日コース×複数会場での開講)。
また、平成20年4月以降もさまざまな事例を教材に、より実務的な研修を行うのが国保連・保険者協議会の役割と考えている。

保険者への巡回支援

実施計画策定などの相談に応じるため、県医療課国保指導班と国保連の保健師等が共同で、要望のあった市町村を巡回し、計画作りの問題や電子データ管理など現場の悩みに応える。
7月末時点で25市町村・5国保組合から要望を受け、すでに5市町村等を訪問した。8月中に要望先への巡回を終え、引き続き10月まで、より具体的な相談に応じていく。
特定健診費用の単価統一に向けての対応

市町村が特定健診・特定保健指導をスムーズに実施するためには、費用の単価統一は重要な課題となる。県の7月の調査によると、大半の市町村が特定健診の単価統一を希望し、統一は医師会に限定することや標準プログラムの特定健診項目に限ることもやむをえないという結果が出た。
具体的には、検査項目・点数の整理や初診料の扱いをどうするのか、検査点数に特別加算を考えている市町村があったりするとどこまで調整できるのか単価統一に向けた課題も多い。今後、市町村や国保組合の納得が得られる単価統一に向け、国保連は県と一緒に県医師会との話し合いを重ねていくことにしている。

特定健診等データ管理システムの運用

国保中央会が設計・開発する「特定健診等データ管理システム」は、1800を越える市町村や国保組合に係る資格や内容の確認機能、健診費用に関する請求支払機能、保険者とデータをやりとりする送受信機能などを持つ予定である。来年4月の全国の国保連の運用を目指して、詳細設計、開発・試験等の作業を進めることになるが、現在のところ開発スケジュールは遅れ気味である。年度末には結構忙しいことになるかもしれない。

具体的にシステムが稼働するにしても、市町村等と国保連が運用契約を結ぶ際の手数料はどうするのか、医師会等健診機関からのデータ送付がすべてオンライン化されるのかどうか、また、市町村や国保組合で、システムに見合ったパソコン環境を整備する費用はどうするのか、健診を実施するに当たって特定健診の項目に上乗せがあった場合のそのシステム化はどうするのかなど、解決しなければならない多くの課題がある。

神奈川県の場合は、機器の関係は既存の国保ネットワークによるパソコンを活用するのも一つの選択肢だろう。また、標準システム以外の項目のカスタマイズ化等については、市町村等の状況や要望を反映させる神奈川独自のシステム作りに向けて、国保連は努力していく必要がある。

被扶養者に対する健診・保健指導の進め方

広域連合及び健保組合被扶養者等の特定健診の受託については、費用単価の統一とはまた異なった難しい側面を持つ。特に被扶養者の問題は、健保組合にとっても最大の課題でもあるが、県内の大規模健保組合によれば、被扶養者の住所地などのデータは完全に把握しきれていないと言う。

県と保険者協議会は、7月に88健保組合にアンケートを行った。それによれば、被扶養者の健診方法は未定(19)、健保組合が自ら行う(12)、健診機関・組織へ委託する(48)、地元医師会に委託する(25)、被扶養者が住む市町村と今後協議したい(56)という結果となり、複数回答とは言え、今後の市町村との話し合いに期待していることが伺える。
保険者協議会の役割が保険者間の調整ということを踏まえ、国保連は被扶養者の健診等の実施方法についても協議検討していく必要があると考えている。

最後に

市町村、国保組合が手探り状態で計画作りや実施に向けてなお多くの課題に取り組んでいる現在、国保連は、市町村等が国保保険者としての役割を円滑に果たせるように、衛生部門との調整をはじめ、医療保険者が行う特定健診等が着実に実施されるように関係者相互の協議推進などについて、道筋をつけていくことが重要であると考えている。従来の仕事の壁を越えて、前向きに取り組んでいきたい。

また、健診・保健指導を担う現場の方には、新しい時代の健診制度を確立する者として自信と誇りを持って臨んでいただきたい。今回の特定健診等が着実に住民の健康の維持・増進につながっていき、また、健診・保健指導実施による予防結果が、生活習慣病予備軍ともいわれる20代、30代の健康づくりに広がっていくようになれば、このたびの医療制度改革は大きな広がりのもと先見性があったと評価されることだろう。

単価統一、巡回支援に 関心

小野氏の講演後、会場からの疑問に応える形で討議・質疑応答に移った。座長は神奈川県予防医学協会常勤顧問の鈴木忠義が務めた。特に関心を集めたのは、特定健診の単価統一についてだった。

・単価統一はいつ頃になるのか?
・単価統一は独占禁止法には抵触しないのか?
・単価統一について、結果的に個々に契約する場合の単価に比べて引き上がることも考えられる、とのアンケート設問は、どう解釈すればいいか?


これらの質問のうち、単価統一の決定時期について小野氏は「今後、県と国保連が県医師会との協議を促進することになるが、市町村の意見を聞く場が設けられることになるだろうから、活発に発言してほしい。時期は予算のことを念頭に置くことになる」と回答。方向として単価の統一に向けて県と一緒に努力すると発言。
独禁法への質問には「国保連内部の討議ではその視点はなかった。診療報酬に基づくものであれば抵触しないのではないかと認識している」と答えた。

3つ目の質問には、「現行の基本健診費用が市町村によって異なっていることを踏まえた設問と思う。協議の結果出された単価統一について、現行より引き上げになった場合の保険者の考えを聞いたものと考えられる」と言うのが回答だった。この問題に関しては微妙な要素が含まれているとの感じを受けた。

巡回支援の具体例を教えてほしい。

小野氏はこの質問に「国保担当職員に限らず、健康づくり課の担当者の参加も求めながら、市町村ごとの状況の把握、計画策定や実施に向けてのさまざまな問題(保健師などの体制づくり、数値目標の設定、予算や議会など)や、電子データ管理、対象者把握、健診・指導の外部委託の方法などをアドバイスしていく」と答えた。

特定健診を、かかりつけ医で受けることは可能か?

現在の基本健診は、地元医師会との契約のもと受診者が医療機関を選べる方法が一般的だが、小野氏は「住民の健康を第一に考えれば、かかりつけ医はこれからは重視される方向であり、基本的な考えを整理する委託契約の条項の一つに、かかりつけ医での受診もできるといった文言を加えるのも一つの方法では…」と話した。

このほか、生活保護者の健診費用の取扱い、保険料滞納者や被扶養者・後期高齢者への対応についての質問があった。鈴木座長は、特定健診・保健指導を実践することになる参加者に積極的な発言や討議を求めたが、以上の質問以外に声はあまり出なかった。

神奈川県予防医学協会が19市・14町への聞き取り方式で得た回答では、「健診・指導実施に向けて庁内組織を変更あるいは変更予定があるのは2、未定は11だった」と鈴木座長。組織上の移管事例はとても参考になるものだが、この結果からも保険者のやりやすい方法を探しあぐねている現状が浮かび上がった。今回の企画では国保所管職員の出席を期待した。案内が一般衛生宛だったためか当該職員の出席は少なかった。庁内での話し合いが進んでいない証左かもしれない。

(健康かながわ2007年9月号)
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