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ピンクリボンかながわ2007 in 厚木

乳がん撲滅を願い、9月に横浜で行われたピンクリボンフェスタを皮切りに様々な啓発運動を展開してきた「ピンクリボンかながわ2007」。最終イベントとして11月11日、ご自身も乳がん体験者であるコスモス女性クリニック院長の野末悦子先生による講演会(座長=鈴木忠義当協会常勤顧問)が厚木市のあつぎパートナーセンターで開催されました(厚木市第17回しあわせライフ・フェスティバルの一環)。会場内には地元小学生による母親の似顔絵が展示され、いたる所にピンクリボンが飾られるなど、アットホームな雰囲気の中で行われた講演会。野末先生は、早期発見・早期治療の重要性を参加者に強く訴えました。その要約をご紹介します。

乳がん死亡者をゼロにしたい

image私自身、乳がんの経験があります。手術を受けたのは1978年。何と来年で30周年になります。今こうして元気で皆さんに会えるのは、早期発見・早期治療することができたおかげです。
私は産婦人科医ですが、その体験もあって今、NPO法人乳房健康研究会で、乳がんを専門にしている3人の先生方と多くのサポーターの皆さんと一緒に、乳がん撲滅のための活動を一生懸命続けています。

日本では乳がんにかかる人が年々増加し、05年には4万人近い人が罹患しています。それは、東京ドームが満員になった時の人数です。そして、その中で亡くなる人が1万人を超えてしまいました。今や乳がんは、30~60歳代の働き盛りの女性たちのがん死亡原因の第1位。毎年こんなにも多くの女性が乳がんで命を落としているのです。それを何とか皆の力で減らしたい、ゼロにしたい、というのが私たちの願いです。

治癒の決め手は早期に発見すること

では、乳がんになったら皆が死ぬのかというと、そうではありません。75%の人は生き残っています。早期に発見すれば約90%の人が治るがんなのです。発見が早ければ早いほど生存率が高くなるのは当然のことで、これはすべてのがんに共通します。
ですから私たちの目的は、しこりが2㎝以下で腋の下のリンパ節への転移がないⅠ期までに見つけて欲しいということ。そのためには、まず自己検診。そして、マンモグラフィや超音波など画像検査を併用した定期検診を受けることが重要です。

07年に乳房健康研究会が行った調査では、乳がんの発見方法として「自己検診」を知っている人は95%、「マンモグラフィ」は90%でした。しかし実際に検診を受けているかというと、それはまた別なんですね。残念ながら、神奈川県は乳がん死亡率ワースト2位です。せっかく見つける方法があるのですから、皆さんにはぜひ実行していただきたい。

毎月1回の自己検診を習慣に

95%認知されていたにも関わらず、自己検診の実施率は47%。多くの人が、触診方法が分からないので自分でやっても意味がない、と思っているようです。そんなことはありません。自分の乳房に関しては、どのお医者さんよりもよく知っているはずなのですから、毎月1回定期的に自分で触診するのはとても大切なことです。
自己触診の基本は、「見る」「さわる」「しぼる」です。まず鏡の前で乳房をよく観察し、4本の指を揃えてさわり、さらに乳首をしぼるようにして分泌物をチェックすること。時期は、生理が始まって1週間ぐらいの乳房が柔らかい時が適しています。閉経後の人は「乳の日」を決め、日常の中で気軽に行う習慣をつけましょう。

そして、しこりや変化を見つけたらすぐに医療機関を受診すること。専門は「乳腺外科」です。乳房には多くの良性の病気がありますので、しこりがすべてがんとは限りません。大事なのは、良性か悪性かはっきり診断をつけて、早期治療につなげることです。

マンモグラフィは早期がん発見に有効

マンモグラフィは乳房専用のX線撮影のことで、まだしこりにならない早期がんのサインを見つけることができます。視触診では見つからない、超音波でも分からない、だけどマンモグラフィで分かるということがあります。つまり、早期がん発見のためにはマンモグラフィが必要だということです。視触診もとても大切。超音波も良い。でも、マンモグラフィも一緒に、ぜひ受けていただきたい。日本では2年に1回と言っていますが、私はできれば毎年やって欲しいと思っています。

前述の調査によると、マンモグラフィ検査を受けている人は21%。前回05年のほぼ倍に増えました。受けた理由として「乳がん発見のために大切だと聞いたから」と答えた人が83%で第1位。また、うれしいことに「受けてみたいと思ったから」と答えた人が39%もいて、増加率はトップでした。マンモグラフィの有効性が、多くの皆さんに理解されてきたのだということが分かります。

受診率向上と今後の課題

マンモグラフィ検査の受診率が向上したとはいえ、定期的に受けたいという人は減っており、まだ70%の人が受けていない状況では、乳がん死亡者を減らすことはできません。今回、私たちは受診率50%を目標に受診を呼びかけています。
受診率をアップし継続受診につなげていくには、情報提供はもちろん、「住まいの近くで、値段が安く、スタッフが女性であること」という受診者の要望に応えた環境整備も必要でしょう。そして将来を考えると、若い時から乳がんに対する正しい知識を持ってもらうため20代への啓発が今後の課題です。私たちは20歳からの乳がん検診を提唱していきたいと考えています。

自分の命と乳房は自分で守ろう

image乳がんにかかりやすいのは、出産経験がなかったり家族に乳がん患者がいる人、などと様々なリスクが言われています。しかし、リスクがない人は大丈夫かというと、そんなことはありません。乳がんは、男女を問わず誰でも、何歳でもかかる可能性があります。幸い、今は早期発見すれば命も助かり、乳房も温存できる時代です。
ぜひとも、皆さんには「自分の命と乳房は自分で守る」ということを考え、検診を受けていただきたい。そして、今日の話を周りの人にも伝えていただきたいと思います。

講演後の質疑応答では、自己触診の一助となるセンサーパットやブレストケアノートにも質問が及び、関心の高さが窺えました。そして、参加者からは「もっと野末先生のお話を伺いたい」という声が聞かれました。

また会場の一角には似顔絵のパネルとともに、啓発活動の一環として各種パンフレットやピンクリボンバッジ等も展示。乳房モデルを使った自己触診の体験コーナーでは、参加者が実際に手に取ってしこりの感触を確かめ、熱心に看護師の説明に聞き入っていました。

(健康かながわ2007年12月号)
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