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健康かながわ

慢性腎臓病(CKD)対策を

image今、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が話題となっているが、医療関係者の間ではそれと同程度の意味を持って慢性腎臓病((Chronic Kidney Disease=CKD)が国内外から注視されるようになってきた。昨年、厚生労働省でも「腎疾患対策検討会」が立ち上げられ、また日本腎臓病学会では「CKD診療ガイド」が作成され、公表されてもいる。そこで今月号ではCKDとは何か、そしてなぜ注目されるのか、今後の課題なども含めて当協会臨床検査部の間島勝徳部長に解説してもらった。

本年4月より開始された特定健診・特定保健指導の関係で、メタボリックシンドロームという言葉はよく知られている。しかし、CKD(慢性腎臓病)といってもメタボほど一般には認知されていないようである。
腎臓病には原因、症状の異なるさまざまな疾患があるが、これらをまとめて慢性腎臓病(以下CKD)という広い概念で捉える考え方は2002年に米国腎臓財団が提唱した。

現在、国内の透析患者数は26万4千人を超え、毎年約1万人の割合で増えており(図1)、2010年には30万人に達するとも考えられている。約500人に1人が透析患者という計算になる。透析にかかる医療費は総医療費の約4%を占める。また腎臓病の初期は何ら症状も出ないので、放置したままだと手遅れになる恐れのある「透析予備軍」といわれる腎機能低下の疑いが強いCKD成人は約480万人以上と推計されている。

厚生労働省も対策に乗り出し、2007年度の戦略研究にCKDを選定し、3億2500万円の予算を計上した。これは喜ばしいことでもあるが、一方では、それだけ深刻な事態になっているということを裏付けていることだともいえる。

CKDとは

imageCKDは、慢性的に腎臓の機能が低下していることを示す考え方で、①尿蛋白が陽性であるなどの腎疾患を示す所見がある②腎機能の低下を示す糸球体ろ過量(GFR‥以下GFR)が1分あたり60ml未満である、のいずれかの状態が3ヶ月以上持続する状態と定義されている。腎臓病により、正常腎機能から腎不全に至る過程において、GFRの減少は最も重要な指標となる。

病期分類としては表1に示すようにGFR値により1~5期に分類され、それぞれの診療計画も示されている。CKDスクリーニングの実施、診断と治療の開始、進行の予測、合併症を把握し治療、透析または腎移植の導入などである。CKD1~3期は自覚症状に乏しく、本人が気付かないことが多いが、検査により発見することが可能である。5期は腎機能が高度に低下した慢性腎不全の状態で、人工透析を要する患者が多い。

GFRは、糸球体でろ過される物質の総量とその血液中の濃度の比で表される。この物質について正確な測定方法はイヌリンを使うが、臨床の場で最もよく使われるのは、クレアチニンで、クレアチニンクリアランス(Ccr)という。これは24時間蓄尿した尿中のクレアチニンと血清クレアチニンの濃度を測定し、算出する。しかしこれでは蓄尿が必要となり手間がかかるので血液(血清)中のクレアチニン値から換算によってGFR(eGFR)を推測する方法が示されている。臨床検査室で多く採用されている酵素法で測定された血清クレアチニン値(Cr)、体重、性別、年齢から求める推算式は表1の脚注の通りである。

CKD診療ガイドでは、クレアチニン値から検出される腎臓のろ過能力が60%を切った人をCKDとし、50%を切ると専門医の受診を勧めている。
平成18年の人口動態調査から主要な死因(表2)を見ると、悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、肺炎、不慮の事故、自殺、老衰に次いで8位が腎不全となっている。心疾患・脳血管疾患は、2位・3位となっているが、CKDはその合併症にもなるので実際にはより多くの腎疾患関連の死亡があるものと考えられる。

他の病気と重なると死亡リスク増大

腎臓病は他の病気と重なることで危険性がより高くなる病気で、糖尿病と高血圧のある患者では死亡リスクが高くなり、心臓病のリスクも高まる。CKD患者は健康な人に比べ、脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患発症の危険性が2倍以上になるという研究もある。患者や発症の危険性がある人を早期に発見し、治療や生活改善することで、メタボ対策同様の心血管疾患予防としてのCKD対策が注目されている。

GFRが90以上でも高血圧や糖尿病、脂質異常症、喫煙習慣などはCKDの危険因子となるため生活習慣の改善や病気の管理が重要となる。

生活習慣改善で発症予防可能

CKDの中で腎不全に至る最大の疾患は糖尿病性腎症だが、十分な血糖管理により、また高血圧による腎硬化症も、適切な血圧管理により発症の予防や進行を遅らせることができる。CKDの発症と進展には生活習慣の影響が強いため、本人の意識と生活習慣改善により発症予防と病気の進行を防止できる可能性がある。
他に、糸球体腎炎等による腎機能障害は、免疫抑制療法等により良好な治療成績が得られている。

人間ドックなどの受診の場合、年1回の検診で尿に蛋白が検出されても、血中クレアチニン濃度は正常値の範囲内であることが多い。このような時は蛋白尿が3ヶ月以上継続するかどうかの確認が重要となる。
また、特定健診の検査項目には血清クレアチニン検査が入っていない、CKDの予防対策としては、ぜひ今後の検討の際に追加してもらいたいと考える。
日本、特に神奈川県は小児腎疾患に関して世界に先駆けて学校検尿のシステムを構築し、腎対策に寄与してきた。これまで蓄積してきた

(健康かながわ2008年5月号)
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