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健康かながわ

新型インフルエンザがやってくる(後編)

いったん大流行が始まったらどのような事態になるだろうか。予測する罹患患者は3千200万人(人口の25%)、外来患者2千500万人である。流行は波動的で最盛期は2~3ヵ月、予測値の半数くらいはこの中で起こるかもしれない。発症すると真っ先に考えるのは病院にかけつけることだ。次は在宅療養中の間の日常生活とりわけ食べることと、療養に必要な品々だ。国のガイドラインを参考にしながらその時の備えを考えよう。(当協会常勤顧問・鈴木忠義)

①医療体制

imageわが国の医療供給能力は一般病床は90万床、感染症病床はわずか1780床。通常1日平均通院患者数は145万人、入院患者は70万人が現状だ。

○流行時の供給能力
日本経済新聞社は全国の主要病院の新型インフル診療体制を調査(2008/7)した(表1)。通常の診療と新型インフル患者の診療をともに行うとしたのは25%、新型患者の治療限定または不可というのが35%。診療をやめる2%、未定35%であると報じた。
毎日新聞社は全国の自治体(47都道府県)を調査(2008/7)(表2)し、大流行時の病床確保の見通しを、できる13、できない25、無回答9、発熱外来の設置場所は決まっている8、協議中19、今後検討19、医師、看護師が足りるのはわずか1、足りない15などと報じた。

○需要側の数字
最盛期を3カ月間とし、この間に予測の半数が受診すると1千200万人(1週当たり100万人)、入院患者は100万人(同8万人)。一般の患者は通院・入院を避けるだろうが、それでも平常時の5割以上の増加が予測される。

○国民の意識
「新型インフル発生時意識調査」(国立感染症研究所)(表3)で「③インフルエンザ流行時38℃の発熱症状が出た」ら受診するのは「致死率が高い」場合は97%、「低い」場合は85%。

○医療従事者の感染による医療サービスの低下
医療従事者も、感染し発症する(危険度はむしろ高い)と考えれば診療能力は激減し、逆に患者は著増する。殺到する患者の対応で平常業務は確保できない。軽症者は自宅での安静を余儀なくされる。

②予測される事態

○膨大な数の感染者と死者
幼児・低学年が発症または学校閉鎖になったら、親は休まなければならない事態に追い込まれる。

○食料品・生活必需品、公共サービス(交通・通信・電気・水道など)の提供に従事する人の感染による物資の不足やサービスの停止
あらゆる業において欠勤者が増加する。たとえば電車やバスが運休し、スーパー、コンビニは時間短縮や品数制限が起こる。

○行政サービスの低下(手続きの遅延等)
行政手続きは法律によって制限の解除や許可、あるいは強制などを行う。緊急の対策に追われたり職員の欠勤によって事務の遅延が発生する。

○日常生活の制限
外出の自粛を要請される。買い物も流通の混乱によって必要品が店頭にない事態になる。

○事業活動の制限や事業の倒産
莫大な経済的損失
これらは流行が収まった後にも大きな影響が残る。

③個人の諸注意

imageこのような事態が想定されていても国民の認識は寒心に堪えない。
外出の自粛が要請されても従わないが7%、様子を見て外出が2人に1人いる(表3①)。
食料の備蓄はまったくしていないが3分の2である(表3②)。
感染を受けない、感染させないためにも必要なことを二、三あげる。

○なるべく自宅にいる
他人との接触を避けるため。

○備蓄(表4)
食料(2週間分)、医療品、日用品を備蓄する。特に治療中の場合は2~4週間分の薬の処方を頼むとよい。

○出勤と通勤手段
感染したことが疑われる場合には潔く休むことが望ましい。交通事業者が計画的運休かやむを得ない運休にしろ、本数が減れば必然的に混雑し感染危険は増大する。時差出勤、自家用車利用も例示されているが、在宅勤務が望ましい。

●「せきエチケット」
このことは最近強調されている。
☆せき・くしゃみの際はティッシュなどで口と鼻を押さえ、他の人から1m以上離れる
☆鼻水などを含んだティッシュはすぐに密閉容器に捨てる
☆マスク着用を などである。

◇ ◇

3ヵ月にわたって新型インフルの流行に際しての備えを述べました。なるべく一般の新聞などで報道されたことを引用しました。
東海沖地震の備えが唱えられて20年以上経ちました。まだ地震はきていませんが、いつか必ずくるといわれています。
新型インフルエンザは地震より予兆はありそうです。それでも備えは必要です。
私は個人よりも集団生活の管理者(学校では校長や養護教諭、事業所では責任者や衛生管理者)に多くの『知のワクチン』(前号参照)の接種を期待しています。

(健康かながわ2008年12月号)
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