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健康かながわ

子どもたちの健やかな成長のために“食”から生活習慣を見直す

6月は食育月間。「食育」を目的として、平成17年4月に栄養教諭制度が発足して5年目。現在、神奈川県内では40人の栄養教諭が活動し、うち7人が横浜市内の小学校に配置されている。

その横浜市では、実際どのように栄養教諭による食育への取り組みが行われているのか。横浜市教育委員会にその現状と今後の展望を聞いてみた。また具体例として、本町小学校(中区)と飯島小学校(栄区)での活動の様子を2カ月続きで紹介し、食育について考えてみたい。

教科と連携した食育

image JR桜木町駅から徒歩3分の本町小学校(以下本町小)には、岩本かをり栄養教諭が赴任している。

岩本教諭はこの学校では2年目だが、神奈川区にある斎藤分小学校で7年間食育指導をしてきた。そこでは食育推進のために職員指導部会が組織され、そこの給食部・保健部・体育部と連携した活動をしてきた。
そして教科と関連する分野では、3・4年生の保健学習や5・6年生の家庭科とリンクさせる形で指導を展開。特に、3年生の保健学習で保護者に授業を参観してもらい、子どもの生活習慣や食習慣を一緒に考え支えてもらうようにしたという。

また保健学習の展開として、夏休みには食事・睡眠・運動の目標を自ら立てることにより、生活習慣を見直し、自己管理ができるものであることに児童が気づくようにした。
その経験を踏まえ、ここ本町小でも学校の特徴を活かした指導をしたいとスタートしたところである。

~3年生の保健学習では「けんこうな生活とは?」を児童に考えさせ、食事・運動・休養(睡眠)が大切だということを学ぶ~

学校給食をベースに食習慣の自己管理ができる子どもに
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~低学年はフルーツからはじめるセレクト給食~

具体的には、まず『食育全体計画』『学年別計画』を作成する中で、4月~9月を育成期、10月~12月を展開期、1月~3月をまとめ期とし、食育の6つの目標である
①食・食事の重要性
②健・心身の健康
③選・食品を選択する能力
④感・感謝の心
⑤社・社会性
⑥文・食文化
を年間で学習できるよう、給食指導並びに教科などを組み立てた。

たとえば給食指導では、食材や献立から季節感や行事を知ることができるように1月には七草粥(神奈川区で育てている七草を使用)、2月は旧正月・春節にちなんで、中華粥や揚げ餃子(外国籍の児童も多いことから)を出すなどの工夫をしている【食文化】。また、1月の給食週間では、高学年の給食委員が一教室に設置された『給食ランド』を休み時間に運営した。食に関するゲームやはし名人コーナーがあり、スタンプラリーで知らず知らずのうちに食に関するマナーや知識が身につくという仕組みになっている【社会性・心身の健康】。

食育指導の中で重要なのは体験学習であると考えている岩本教諭が試みているのが、自分で選べる『セレクト給食方式』や『バイキング給食方式』である。

昨年は11月~12月の給食で、主食のパン・主菜(揚げ物)・デザートの3分野で、それぞれセレクト給食を実施した。あらかじめ児童一人ひとりが選んで注文をしておいたものを当日食べるという方式である。コーンパンを選んだ児童も、次回は先生がおいしそうに食べていたほうれん草パンを選んでみようという興味や関心がでてくる。そしてまとめ期の2月は、『バイキング給食方式』にチャレンジするというわけである。

1・2年生はフルーツバイキング、3年生はデザートバイキング、4年生は主菜バイキング、5年生は副菜バイキング、6年生は主食バイキング。さらに6年生は3月に、選択する範囲が広くなる卒業バイキングを実施する。
これらの日常と違った給食スタイル方式をすることによって、自分で考え、食品や料理を選択するという能力や取り分けるときなどのマナーが身につくということである【食品の選択・社会性・心身の健康】。

中学校との連携

image横浜市の中学校では給食がないため、弁当にも生かせる食育でなければならない。そこで、6年生は家庭科の時間を使って弁当作り体験もする。これも、中学校からの生活を見据えての実習である。

さらに岩本教諭は、横浜市の提唱する周囲の学校での活動も行っている。老松中学校、吉田中学校、南吉田小学校と・食育ネットワーク・を組み、年3回打ち合わせをし、その学校の食育の推進に協力をしている。その内容は、学校保健委員会への協力をはじめ、自動販売機の飲料に関する講義、弁当の栄養面やスポーツをする生徒の栄養管理などが挙げられる。

今後の展望

「これからの課題は、食に関心の少ない保護者とどのような連携ができるかということでしょうか」と岩本教諭はいう。そして「小学校時代こそ家族で食事をしたり、親子で料理をしたり、農業体験をして食とかかわって欲しい」とも。今後はアンケート調査などをもとに、親子でできる食育体験にも取り組んでいきたいと語った。

「食」は生きることの根本
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横浜市教育委員会事務局
指導部健康教育課
指導主事
立花 充

横浜市では、現在7人の栄養教諭を、中区・本町小学校、栄区・飯島小学校、金沢区・金沢小学校、港北区・日吉台小学校、神奈川区・白幡小学校、保土ヶ谷区・上菅田小学校、戸塚区・名瀬小学校に配置しています。
将来的には、各区に一人ずつは配置していきたいと県では考えているようです。

子どもたちを取り巻く生活環境はずいぶんと多様化しており、大人の生活に影響される部分も多々あり、朝食の欠食や孤食など、望ましくない状態にある子もいます。これを本来あるべき「食」の姿―食べる楽しみや、人とのコミュニケーションの場―に戻す必要があると思います。また、「食」が改善されることにより、生活が安定し、心や体が強くなることも期待されます。そういう意味で、授業をはじめとして「食」を多角的に学ばせることのできる栄養教諭への期待は大きいですね。

しかしながら実際は、栄養教諭や栄養職員の数が十分でないなど、課題もあります。
我々としては、子どもたちのより良い生活環境のため、栄養教諭はもちろん栄養職員の皆さんも、配属された学校だけでなく、周りの学校へのネットワーク作りや情報発信基地となり、親や地域をも巻き込んだ「食育」を担う役割をしてもらいたいと思っています。

(健康かながわ2010年6月号)
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